ページ上に戻る ページ上に戻る

情報法政策学研究センター

menu

新世代知的財産法政策学の創成

21世紀COE知的財産研究叢書 4

田村 善之・編著

『新世代知的財産法政策学の創成』

有斐閣 2008

 

編者による紹介

 北海道大学法学研究科は、2003年度に21世紀COEプログラム「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」の拠点に採択され、5年のプロジェクト期間中、知的財産法政策学の確立に向けて、様々な研究を行ってきた。
 こうした本拠点の研究の成果は、主としてCOE雑誌「知的財産法政策学研究」創刊号~20号(2004年~2008年)に発表してきた。同誌は大学の法学部や関連学部、知的財産法の研究者を中心に配布してきたが、市販されているものではないために、必ずしも希望者全員に行き渡っているとまではいえないところがある。それを補完するために、これまで21世紀COE知的財産研究叢書として、田村善之『市場・自由・知的財産』(有斐閣・2003年)、稗貫俊文『市場・知的財産・競争法』(有斐閣・2007年)、青木博通『知的財産権としてのブランドとデザイン』(有斐閣・2007年)を発行してきたが、これらの単著に加えて、5年間の21世紀COEプログラムの集大成を示すために、同叢書の第4巻として上梓したのが、本書『新世代知的財産法政策学の創成』である。
 本書収載の論文は、21世紀COEプログラムの集大成を図るという本書の趣旨に即して書き下ろしたものと、前記知的財産法政策学研究に掲載された論文の中から北海道大学法学研究科所属のスタッフの著した代表的な論文を、適宜、アップデートしたものによって構成されている。
 執筆者の多様な専攻を反映して、本書の扱うテーマも多岐にわたる。

[収載論文]
第1部 知的財産法総論
 第1章 田村 善之:知的財産権と不法行為
 第2章 Nari LEE:効果的な特許制度に関する多元的理論の試み
 第3章 長谷川 晃:〈競争的繁栄〉と知的財産法原理
 第4章 吉田 邦彦:「知的所有法・サイバー法」原論の試み

第2部 不正競争防止法
 第5章 瀬川 信久:知的財産権の侵害警告と正当な権利行使(再論)

第3部 特許法
 第6章 稗貫 俊文:「特許権の密林」と独占者の自由
 第7章 吉田 広志:冒認に関する考察
 第8章 村上 裕章:取消訴訟における審理の範囲と判決の拘束力

第4部 著作権法
 第9章 吉田 克己:著作権の「間接侵害」と差止請求

第5部 関連法
 第10章 道幸 哲也:競業避止義務制約の法理
 第11章 山本 哲生:規範的損害と保険

第6部 国際知的財産法
 第12章 常本 照樹:先住民族の文化と知的財産に関する一考察
 第13章 会沢 恒:アメリカ著作権法と連邦制の交錯
 第14章 横溝 大:知的財産に関する若干の抵触法的考察
 いずれのテーマについても、現時点における決定版となるような本格的な論文を用意できたと自負している。日々新しい問題が生起される知的財産法の分野において本書が貢献するところがあるのであれば、拠点リーダーとしてこれに優る喜びはない。

(田村 善之)

目次

第1部 知的財産法総論

第1章 知的財産権と不法行為ープロセス志向の知的財産法政策学の一様相

第1節 問題の所在

第2節 最上級審判決

1 雲右衛門事件から大学湯事件へ−−法律上保護される利益の保護  2 物のパブリシティ最判の位置づけ  3 小括

第3節 下級審の裁判例

1 抽象論  2 裁判例の整理に際して留意すべき点  3 模倣行為の不法行為該当性に関する裁判例  4 知財高裁第4部の挑戦  5 小括

第4節 知的財産権の特徴

1 知的財産権の正当性  2 知的財産権の危険性

第5節 決定のプロセスとしての市場・立法・行政・司法の役割分担

1 市場の活用  2 法的な介入(権威的決定)のあり方

第6節 知的財産権と不法行為

1 結論  2 否定説の検討  3 裁判例の評価

第7節 結びに代えて

第2章 効果的な特許制度に関する多元的理論の試み

第1節 はじめに

第2節 特許制度の効果と効率性

1 効率性の定義  2 効率的な特許制度

第3節 財産権論と配分的効率性

1 自然権論および財産権論的効率性  2 労働または便益に対する報酬としての知的財産権  3 効率的な特許財産権の制度

第4節 特許制度を政策的道具とみる理論

1 独占理論  2 インセンティヴ理論

第5節 結語

第3章 <競争的繁栄>と知的財産法原理ー田村善之教授の知的財産法理論の基礎に関する法哲学的検討

第1節 はじめに

第2節 基本パースペクティヴの問題

第3節 他理論とのコントラスト

第4節 <情報の正義>からのオルタナティヴ

第4章 「知的所有法・サイバー法」原論の試みーディジタル化時代・多文化的国際化時代における情報法学の新たな展開(アメリカ法学からの示唆)

第1節 問題意識−−アメリカ法学からの刺激

第2節 前史−−20世紀までにおける知的所有権の拡張とその背景

1 アメリカでの各種知的所有権法の歴史−−その拡大現象の数々  2 拡張の実質的背景

第3節 知的所有権の正当化の諸理論とその意義・評価

1 四つの理論的説明  2 留意点及び評価

第4節 ディジタル化時代の情報法学の問題状況

1 概況  2 問題その一・情報コントロールの強化−−電子商取引契約法の新たな展開  3 問題その二・情報交流の相互化及び「表現の自由」「民主主義」論の再考  4 問題その三・コンピュータ・ネットワークによる大量情報利用と知的財産業界(とくに音楽産業、映画産業)の今後のあり方

第5節 多文化時代における知的所有権のあり方−−「商品化」の問題、補償問題

1 「商品化」の飽くなき進行とそれに対する批判的スタンス(「非商品化」の視覚)の必要性  2 多文化主義との関係と「商品化」  3 知的所有権レベル(とくに著作権)における補償問題

第6節 国際化時代における情報コントロール・排他的独占緩和の必要性−−とくに特許における強制実施の今日的意義

1 国際的経済力格差の広がり(知的所有権〔とくに特許権〕によるその拍車)とその強制的ライセンス契約による国際的矯正の必要性  2 具体的手法

第7節 結び

第2部 不正競争防止法

第5章 知的財産権の侵害警告と正当な権利行使(再論)

第1節 はじめに

第2節 裁判例の分析

1 権利行使論の意味  2 権利行使論の意義−−同時期の裁判例との比較  3 権利行使論の背景−−かつての裁判例との比較

第3節 隣接問題との比較

1 名誉毀損の判例との比較  2 不当保全処分による損害賠償責任との比較

第4節 おわりに

第3部 特許法

第6章 「特許権の密林」と独占者の自由

第1節 はじめに

1 問題:「特許の密林」状態  2 問題の位置づけ

第2節 特許権のジャングル化の帰結と解決策

1 特許権のジャングル化の帰結  2 特許権の密林がもたらす問題の解決策:立法措置と自力救済

第3節 特許権のジャングル化の解決策としての自力救済

1 米国のインテル事件  2 日本のマイクロソフト・NAP条項事件

第4節 独占者の自力救済に対する競争法上の評価

1 自力救済に対する四つの競争法上の対応  2 四つの競争法上の対応の評価

第5節 一応の結論

第7章 冒認に関する考察ー特に平成13年最高裁判決と平成14年東京地裁判決の関係をめぐって

第1節 議論の前提

第2節 平成13年最高裁判決以前の裁判例・学説

第3節 平成13年最高裁判決

第4節 平成14年東京地裁判決

1 裁判例の理論  2 インセンティヴ論からの考察  3 反論

第5節 従来の裁判例の整理

1 真の権利者が出願した類型  2 真の権利者が出願していなかった類型

第6節 特許法49条7号の解釈の問題

1 特許法49条7号の判断基準時  2 査定審決時か出願時か

第7節 無効審判の請求人適格との関係

1 特許法123条2項の趣旨  2 冒認を理由とする特許無効の抗弁  3 「利害関係人」の範囲

第8節 まとめ

第8章 取消訴訟における審理の範囲と判決の拘束力ー審決取消訴訟からの示唆

第1節 はじめに

第2節 取消訴訟の一般理論

1 審理の範囲  2 取消判決の拘束力  3 小括

第3節 審決取消訴訟

1 審決取消訴訟の意義と特色  2 審理の範囲  3 取消判決の拘束力

第4節 検討

1 早期解決(救済)志向と再審査志向  2 審決取消訴訟  3 取消訴訟の一般理論

第5節 おわりに

第4部 著作権法

第9章 著作権の「間接侵害」と差止請求

第1節 問題の枠組み

1 著作権の「間接侵害」とは何か  2 問題の枠組み  3 「間接侵害」をめぐる紛争の類型化

第2節 場所機会提供型:カラオケ法理の成立と展開

1 手足論による利用主体性の拡大  2 いわゆる「カラオケ法理」の成立  3 「カラオケ法理」の展開

第3節 道具提供型・幇助法理による救済

1 損害賠償請求  2 差止請求  3 小括

第4節 システム提供型:カラオケ法理の変容

1 差止請求が認められた事例  2 差止請求が否定された事例  3 小括

第5節 著作権の「間接侵害」をどのように考えるか

1 管理支配型:利用主体性の拡大  2 道具提供型:幇助者についての侵害主体性の承認

第6節 おわりに

第5部 関連法

第10章 競業避止義務制約の法理

第1節 はじめに

第2節 労働法上の関連論点

1 採用過程  2 展開過程  3 終了時  4 退職後

第3節 退職後の競業避止義務をめぐる判例法理

1 合意の有無・形成をめぐる裁判例  2 合意の効力をめぐる裁判例  3 特段の合意が存在しない場合  4 引き抜きと連動したケース

第4節 競業避止義務制約の法理

1 基本的な立場  2 競業避止義務を制約する視点

第11章 規範的損害と保険ー知的財産権侵害に即して

第1節 はじめに

第2節 懲罰的損害賠償と保険

1 総論  2 懲罰的損害賠償による抑止力と保険

第3節 規範的損害と保険

1 規範的損害概念  2 保険による抑止力への影響  3 保険契約の効力

第6部 国際知的財産法

第12章 先住民族の文化と知的財産に関する一考察

第1節 はじめに

第2節 先住民族の文化の特質

第3節 先住民族の知的財産と国際人権基準

第4節 知的財産と伝統的知識

第5節 先住民族からの主張

第6節 まとめにかえて−−「先住」民族であることの意味

第13章 アメリカ著作権法と連邦制の交錯

第1節 連邦議会の立法権限

1 著作権・特許条項  2 著作権条項の迂回?

第2節 連邦制と州法の関係

1 著作権・特許条項の効力  2 最高法規条項と専占の一般的な枠組  3 著作権分野における黙示的専占の例

第3節 著作権法301条−−明示的専占

1 背景  2 対象要件  3 権利の相当性要件と不正利用法

第4節 契約をめぐって

1 追加要素は何か?  2 アイディアの提案  3 シュリンクラップ契約、クリックラップ契約の場合

第5節 裁判管轄をめぐる問題

1 混合型訴訟  2 抗弁・反訴と移送

第6節 結語

第14章 知的財産に関する若干の抵触法的考察

第1節 はじめに

第2節 知的財産に関する国際条約の抵触法への影響

1 はじめに  2 保護国法主義を見出す立場  3 ベルヌ条約中に準拠法選択規則が含まれていないとする立場  4 検討  5 属地主義の原則と条約  6 小括

第3節 外国知的財産権に基づく請求に関するドイツでの議論の変遷

1 初期の議論−−外国知的財産権に基づく請求の否定  2 外国知的財産権に基づく請求を認める立場の登場  3 裁判例の変化  4 若干の考察−−結語に代えて

更新日 2013.11.27