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情報法政策学研究センター

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知的財産権としてのブランドとデザイン

21世紀COE知的財産研究叢書 3

青木 博通

『知的財産権としてのブランドとデザイン』

有斐閣 2007

 

著書による紹介

 本書は、ブランド(商標)とデザイン(意匠)に関わる知的財産権の保護の問題について、米国、欧州の制度との比較も交えつつ、日本の商標法、意匠法及びその周辺法を考察するものである。
 1984年から弁理士として国内外のクライアントの抱えるブランドとデザインに関する法律問題に取り組んでおり、また、世界知的所有権機関(WIPO)で開催された商標法条約外交会議(1994年)及び意匠の国際登録に関するヘーグ協定ジュネーブアクト外交会議(1999年)にも日本弁理士会代表として出席し、実務家の視点で発言をしてきた。このような私の実務的な経験に基づく切り口で、本書の問題設定がなされている。
 第1章「商標の現代的諸問題」では、現実の流通社会において機能する生き物としての性格を有する商標について顕在化してきた諸問題を扱っている。
 具体的には、ブランドの財産的価値に影響を与える商標の普通名称化及び周知・著名商標の保護の問題、商標の新しい保護対象である小売等役務商標(2007年4月1日より導入)、立体商標、地域団体商標及びキャッチフレーズの構成からなる商標の保護の問題、2000年頃から顕在化してきたインターネット上の商標の保護をめぐる問題、商標権侵害の判断基準として判例上確立した商標的使用態様の解釈と類型化、そして、最後に商標・不正競争事件において証拠として頻繁に用いられるようなったアンケート調査の問題をとりあげた。
 第2章「デザインの効果的保護」では、マーケティング・トゥールとして注目されているデザインを如何に効果的に保護するかについて、新しくできた部分意匠制度、著作権法及び不正競争防止法2条1項3号による未登録意匠も含めたデザインの保護をとりあげ、最後に意匠法で最も解釈の難しい意匠権侵害の判断基準について、日本、米国、欧州及び中国との比較法的考察を行った。
 第3章「商標と意匠の国際的保護」では、欧州における広域保護システムで、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)が管轄する、欧州共同体商標規則及び欧州共同体意匠規則、また、世界知的所有権機関(WIPO)が管轄する商標の国際登録制度であるマドリッド協定議定書及び意匠の国際登録制度であるヘーグ協定をとりあげ、最後に、制度の国際的調和が遅れ、戦略がもっとも立て難い外国意匠制度を利用する際の留意点についてふれた。
 第4章「商標と意匠の保護の交錯」では、立体商標と意匠の比較を行うとともに、両制度をどのように利用すべきかについても提言を行った。
 グローバルな視点で商標と意匠の保護システムをみると、商標については、使用主義をとる米国、無審査主義及び登録主義をとる欧州、審査主義及び登録主義をとる日本のように分かれており、また、意匠についても、特許法の中で意匠を保護する米国、ロシア及び中国、独立した意匠法をもち無審査主義をとる欧州、独立した意匠法をもち審査主義をとる日本のように、各国の制度の基本構造が異なっている。
 そして、保護の地域的範囲については、欧州では、各国の制度、それを覆う欧州共同体商標規則及び欧州共同体意匠規則があり、さらに、商標及び意匠の国際登録制度がそれらとリンクする構造になっている。
 本書は、このような複雑な構造の中で、ブランドとデザインの保護が如何にあるべきかについても、国際水準の法律実務家に対して、一つの指針を提供すべく、横断的な研究を行っている。

(青木 博通)

 

目次

第1章 商標の現代的諸問題

第1節 商標の普通名称化−そのプロセス,対応策,立法論−

1 はじめに  2 商標の普通名称化とは  3 商標の普通名称化の法的効果  4 商標の普通名称化に関する裁判例  5 商標の普通名称化へのプロセス  6 商標の普通名称化への対策  7 欧米における普通名称化対策  8 立法論

第2節 周知・著名商標の保護強化−その実務傾向−

1 はじめに  2 登録阻止の場面  3 不正使用の場面  4 権利行使の場面  5 登録商標と未登録周知・著名商標との調整  6 国際的動向  7 おわりに

第3節 小売サービスに関する商標の保護

1 はじめに  2 サービスマーク制度導入と小売サービス  3 小売サービスを否定した2つの東京高裁判決  4 シャディ・ESPRIT判決から法改正までの経緯  5 外国における小売サービスの登録の状況  6 法改正の内容

第4節 米国HONEYWELL事件にみる立体商標の保護

1 はじめに  2 第1次HONEYWELL事件  3 第2次HONEYWELL事件  4 解説  5 米国特許商標庁における立体商標の取扱い  6 日本及び欧州における立体商標の保護  7 おわりに  8 日本におけるその後の進展  9 米国におけるその後の進展

第5節 地域団体商標制度と模倣対策

1 はじめに  2 旧法における地域ブランドの保護  3 改正法における地域ブランドの保護  4 地域団体商標制度の登録要件  5 地域団体商標の登録の効果と模倣対策  6 地域団体商標の管理  7 地域団体商標,団体商標,通常の商標との比較  8 外国法制度  9 その後の進展

第6節 キャッチフレーズの構成からなる商標の保護−商標登録の可能性と侵害判断基準−

1 はじめに  2 キャッチフレーズの構成からなる商標の登録可能性  3 キャッチフレーズの構成からなる商標の侵害判断基準  4 不使用取消審判  5 国境を越えたウェブ上の広告  6 メタタグ上の広告

第7節 インターネットと商標の現代的展開

1 はじめに  2 インターネットと商標調査・出願  3 インターネットと商標権侵害  4 ドメイン名の紛争と対応策  5 日本版反サイバースクワッター法の導入

第8節 ウェブサイトの階層性と商標権侵害−ドコモeサイト事件−

1 事件の概要  2 判決  3 検討  4 本件に関連する問題点

第9節 商標権侵害の基準「商標的使用態様」

1 はじめに  2 商標的使用態様の法的位置付け  3 商標的使用態様を否定した裁判例  4 商標的使用態様を肯定した裁判例  5 裁判例の分析  6 不正競争防止法2条1項1号における「商品等表示としての使用」  7 不正競争防止法2条1項2号における「商品等表示としての使用」  8 「商標的使用態様」と「商品等表示としての使用」との関係

第10節 商標・不正競争事件における証拠としてのアンケート調査

1 はじめに  2 アンケート調査の位置付け  3 アンケート調査を扱った事件  4 採用例の概要と解説  5 不採用例の概要と解説  6 アンケート調査のあるべき姿

第2章 デザインの効果的保護

第1節 タイプ別部分意匠類否論

1 はじめに  2 意匠の特質と全体意匠の類否判断の手法  3 部分意匠の類否判断基準  4 創作説,物品混同説との関係  5 部分意匠の意匠権の効力と部品意匠の意匠権の効力  6 おわりに  7 その後の展開

第2節 著作権法による意匠の保護

1 著作権と意匠権の保護対象  2 意匠(実用品)の著作権による保護の裁判例  3 保護要件  4 著作権の効力  5 著作権と意匠権の抵触  6 著作権法によるロゴマークの保護  7 著作権法で意匠を保護する場合の留意点  8 諸外国の保護の状況

第3節 不正競争防止法2条1項3号による意匠の保護

1 規定の概要  2 規定の趣旨  3 商品の形態模倣行為に該当する要件  4 保護期間  5 譲渡等する行為  6 原告適格  7 救済措置  8 適用除外  9 経過規定  10 不法行為との関係  11 意匠を不正競争防止法2条1項3号で保護する場合の留意点

第4節 意匠権侵害の判断基準−日本,米国,欧州,中国の比較法的検討−

1 はじめに  2 日本の判断基準  3 米国の判断基準  4 欧州共同体意匠規則の判断基準  5 中国の判断基準  6 比較検討  7 まとめ  8 その後の進展

第3章 商標と意匠の国際的保護

第1節 欧州共同体商標規則

1 はじめに  2 CTMの出願手続  3 異議申立手続と各国出願への変更  4 CTMのメリット  5 CTMのデメリット  6 Opting Backとマドリッド協定プロトコル  7 CTMにおける諸問題  8 EU加盟国の拡大と経過措置

第2節 商標の国際登録制度−マドリッド協定議定書

1 マドリッド協定議定書の概要  2 わが国商標権との関係

第3節 欧州共同体意匠規則−市場指向型デザイン保護システムの概要とその後の進展−

1 はじめに  2 欧州共同体意匠規則と欧州意匠指令  3 登録共同体意匠制度  4 非登録共同意匠  5 加盟国拡大に伴う経過措置

第4節 戦略的外国意匠出願の留意点−制度枠組み,クレーム・ドラフティングを中心に

1 はじめに  2 制度枠組と留意点  3 保護対象と留意点  4 機能的意匠と留意点  5 クレーム・ドラフティング,新規性の陳述等  6 おわりに

第5節 意匠の国際登録制度−ヘーグ協定−

1 産業財産権の国際登録制度  2 ヘーグ協定の現状  3 ヘーグ協定1960年ヘーグアウトの概要  4 1934年ロンドンアクトの特徴  5 ヘーグ協定1999年ジュネーブアクト  6 ヘーグ協定とマドリッド協定議定書(マドプロ)との違い

第4章 商標と意匠の保護の交錯−−立体商標と意匠

1 はじめに  2 立体商標と意匠の比較  3 立体商標と意匠の活用法  4 立体商標と不正競争防止法

 

更新日 2013.11.27