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趣旨
平成20年度 基盤研究A 研究計画調書
基盤研究A  研究1
分野
分科
細目
社会科学
政治学
国際関係論
研究代表者氏名
松浦正孝
所属研究機関・部局・職
北海道大学・大学院公共
政策学連携研究部・教授
研究課題
アジア主義のビジョンとネットワークに関する広域比較研究
 
研究組織
氏  名
所属機関・部局・職
役割分担等
松浦正孝 北海道大学・大学院公共政策学連携研究部・教授 総括(全体)、戦前・戦後日本
山室信一 京都大学・人文科学研究所・教授 総括、アジア一般理論
中島岳志 北海道大学・大学院公共政策学連携研究部・准教授 総括、インド、戦前・戦後日本
ディビッド・ウルフ 北海道大学・スラブ研究センター・教授 ソ連要因・中国要因
宮城大蔵 政策研究大学院大学・政策研究科・助教授 第三世界要因、対インドネシア
大庭三枝 東京理科大学・工学部・准教授 アメリカ要因
土屋光芳 明治大学・政治経済学部・教授 中国(汪兆銘政権)
高橋正樹 新潟国際情報大学・情報文化学部・教授 タイ・ベトナム
姜 東局 名古屋大学・大学院法学研究科・准教授 朝鮮
大賀 哲 九州大学・大学院法学研究院・准教授 国際理論・日本
浜 由樹子 津田塾大学・国際関係研究所・研究員 ユーラシア
吉澤誠一郎 東京大学・大学院人文社会系研究科・准教授 中国(清・中華民国)
【連携研究者】
酒井哲哉 東京大学・総合文化研究科・教授 理論(アジア秩序論)
後藤乾一 早稲田大学・アジア太平洋研究科・教授 インドネシア、在外邦人
都丸潤子 早稲田大学・政治経済学術院・教授 イギリス要因(対マラヤ)
関根政美 慶應義塾大学・法学部・教授 オーストラリア、太平洋諸島
矢口祐人 東京大学・総合文化研究科・准教授 ハワイ
高原明生 東京大学・法学(政治学)研究科(研究院)・教授 現代中国
遠藤 乾 北海道大学・大学院公共政策学連携研究部・教授 理論(EUとの比較)
松本佐保 名古屋市立大学・人文社会系研究科・准教授 イギリス要因(アジア移民)
 
研究目的
要旨

 アジア主義研究は、従来、主に日本の侵略・戦争をもたらしたイデオロギーとして、その言説分析が中心であった。本研究は、「アジア主義」を「自地域を中心に『アジア』をイメージすることで政治的・経済的な機能を持たせようとしたアジア各地域に遍在するイデオロギー」と再定義することで、アジア各地のアジア主義を相対化し、それらの構造と生成過程、相互関係を検討する。各アジア主義の構造とは、@イメージされる「アジア」の構成や物語(ビジョン)A「アジア」をイメージする際の帰属ネットワーク(地域・宗教・民族・経済などの共同体要因)である。生成過程は、「アジア」イメージが外から創出されるという視点から、上記の内的要因及び、域外要因(外的脅威、外部からの文化工作やイデオロギー化)との間で、アジア主義が醸成されてくる歴史的過程である。相互関係は、各アジア主義相互の競合・連鎖・統合(併合)の関係である。これらの比較検討によりアジア主義を相対化し、アジアにおけるアジア共同体の可能性と条件、各国家・政治主体の共生の可能性を探ることこそ、本研究の目的である。

研究の学術的背景と経緯

 通商経済関係の強化される東アジアにおいてアジア経済圏・通貨圏構想が議論され、環境・衛生問題の統合的解決の必要が叫ばれ、学界でも論壇でもサミットなど国際政治でも、(東)アジア共同体や地域安全保障がしきりに論じられている。しかるに、日本の学界では、近年話題となった井上寿一『アジア主義を問い直す』(2006)を含め、相変わらずアジア主義はほとんど日本の戦争・植民地支配の責任論及びそれへの反論として、日本を主体とした言説・歴史の整理に終始している。しかし、山室信一『思想課題としてのアジア』(2000)・『日露戦争の世紀』(2005)はアジア全体の中で日本のアジア主義を位置付け、しかも同時代の思想・文化の連鎖という斬新な視角を提供し、米谷匡史『アジア/日本』(2006)も、沖縄・中国・韓国を簡単に踏まえながら日本のアジア主義を問い直そうとするなど、新たな動向が生まれ始めた。海外では、Prasenjit Duara, “Sovereignty and Authencity: Manchukuo and the East Asian Modern”(2003) が、満州国での日本によるアジア主義を中国史やナショナリズム・帝国主義・アイデンティティ・モダニティなど幅広い視野の中で位置づけ、注目されている。一方、古田博司『東アジア・イデオロギーを超えて』(2003)のように、大東亜共栄圏論を含むアジア各地の小中華思想を同一平面上の対立不可避な競合者と見なす注目すべき研究も登場した。これらの新たな学界動向から、アジア主義を、自地域を中心としたアジア秩序観として再構成した上で、各地域のアジア主義それぞれの構造・生成過程の比較と相互交渉とを取り上げてはどうかと考えるに至った。上記の新動向は断片的・限定的なものに止まるため、広い地域の各専門家による総合・比較の共同研究が必要である。

 また、申請者は、それぞれ従来の科研費研究による各国専門家との海外交流の中で、こうした問題の所在と共同研究の必要を感得してきた。代表者の松浦は2004-2006基盤B「植民地台湾をめぐる中国ナショナリズム、日本の汎アジア主義、台湾人ナショナリズム」において、国際シンポジウム及びその後の成果である松浦編著『昭和・アジア主義の実像――帝国日本の南進と台湾・「南洋」・「南支那」』(ミネルヴァ書房、2007)刊行を準備する過程で、台湾人・香港人・モンゴル人・韓国人の研究者から、実はアジア主義はそれぞれの国にあり重要な課題である、との指摘を受けた。また、研究分担者の山室は、単独で行うアジアの思想連鎖の作業に限界を感じ、共同研究の必要を感じていた。同じく中島は、科研費特別研究員として在米研究中に参加した American Historical Association におけるラウンドテーブル“Transnationalism and Imagings: Nationalism, Universalism and Imperialism in Modern Asia?”(2006)において、トルコ人であるCemil Aydin(North Carolina at Charlotte)を中心として9・11以後のアメリカで興隆しつつある非西洋主義研究ネットワークと交流し、東アジアのみならず、トルコ、イスラーム、東南アジア、ハワイなど太平洋諸島を含むアジアの各地域におけるアジア主義を総合的に研究する必要を痛感した。

研究期間内に明らかにすべきこと

1.広域としてのアジアにおける、多様なアジア主義のビジョンの解明

 各地域を専門・母国とする研究者が、その地域におけるアジア主義について、そのイメージ及びビジョンを具体的に明らかにする。ロシアのユーラシア主義、インドやトルコ、島嶼部を中心とする「アジア」イメージなど、連携研究者・研究協力者の協力も得ながら従来あまり知られていない多様なアジア主義が各地域にあったことを示すことで、既成のアジア主義イメージを覆す。
 その際、中国、日本、朝鮮、ロシアなどから成る東アジア・北東アジア地域(特に日・中)に比重を置き、日中については新たな視角からアジア主義像を再構築すると共に、日中の間に埋没してきた朝鮮・台湾・香港・蒙彊などについてもそれぞれの地域からのアジア主義を発掘する。同時に、東南・南西アジアにおいては、インド、タイ・ベトナム、インドネシアなどに絞って濃密な分析を加える。また、多角的に検討するため、島嶼部のハワイ・マラヤ・オーストラリアなどについては連携研究者が、トルコ、蒙彊、台湾、香港などについても当該地域出身の海外研究者が研究協力者として2度のシンポジウムに参加し、参照事例として報告・議論する。
 

2.各地域のアジア主義の構造比較・相互関係分析の解明

 アジア主義の一種である華夷秩序論についてはこれまで研究が蓄積されてきたが、「大東亜共栄圏」については、実際に「アジア」イメージを支えたローカルなネットワークなどの政治的・経済的・社会的・宗教的構造、生成発展過程の解明がなお不十分であり、その他の地域についてはほとんどなされて来なかった。これらの内実の構造を、具体的なケースに即して比較し、その共通点・相違点を明らかにした上で、相互の競合・連鎖・統合などの位相を検討する。
 

3.アジア主義及び「アジア」を形成した域外要因などの解明

 主に戦後冷戦期に際して、アジア主義及びその基盤となる「アジア」組織を創出するのに大きく関わった域外要因として、アメリカ、ロシア、イギリス、オーストラリアなど域外国が与えた影響を分析比較し、それぞれの関係の構図を検討する。また域外国ではないが、ASEAN成立に影響を与えた中国や、第三世界・非同盟という指向、国内運動の視点をも上記の検討に加える。

学術的特色・独創性及び予想される結果・意義

 第一に、アジア各地域におけるアジア主義を同一平面上で比較・関係分析することで、自民族中心主義を克服する方法が独創的である。知られていなかった地域のアジア主義も発掘されよう。研究協力者である海外研究者とも連携することで、相対化を一層強化し、新たな論点や視角を発見し、そこから新たな切り口と事実とを生み出し新分野を開拓する波及効果も大いに期待される。

 第二に、各地域のアジア主義を分析・比較する際に、各地域の専門家がこれを行い、理論化作業の段階で域外要因研究者や理論的専門家との共同作業を行い、しかも総括者がすべてに関与してプロジェクトの方向性を統合する方法が、専門的に高度で、かつ視野の広い総合化をもたらすという従来両立困難だった成果を期待させる。一人では超えられない限界を乗り越えられよう。

 第三に、アジア主義分析にあたって、本研究は、ウチ(基盤となる共同体・ネットワーク)/アジア/ソト(域外要因)という3層構造による分析という新しい視角を打ち出した。このことによって、作られた概念としての「アジア」イメージを支えた具体的な経済要因・宗教要因・文化要因などの構造的要因を、多角的・学際的に明らかにする効果が得られよう。「アジア」というイメージは、単なる言説によって浸透し広まるのではなく、具体的な経済利益、宗教的基盤、文化イメージを媒介として始めて実感されるのである。単なる言説分析に止まらず、政治経済史・宗教文化史など学際的研究や、地域固有の政治価値研究などの新たな展開をもたらすであろう。

 第四に、第三の3層構造分析と関連して、従来近代国民国家と結びつけられていたアジア主義を国家という枠組みから一旦解き放ち、日常人々が何に立脚してアジアをイメージしているかを、郷土など身近な共同体レベルから検討し直す。例えば、日本アジア主義の父西郷隆盛は、雄藩自立という発想で、西洋帝国主義から守るべき「アジア」をイメージし、彼の系譜にある頭山満らは、「滅満興漢」のために当初連省自治運動から出発した孫文と提携した。アジア主義は常に西洋型近代国家と対立し続けたはずだが、学界ではアジア主義は国家主義と等値されることも多かった。その常識を覆し、アジア主義が各国における西洋型近代国家化の流れとどう決別・対立・交錯したかを解明する。

 
研究計画・方法
要旨

 本研究の目的は、アジア各地におけるアジア主義の個別事例を明らかにし、日本のアジア主義を相対化すると共に、各地域のアジア主義の構造・生成過程・相互関係の析出を通じ、各アジア主義が共生する条件を探ることである。本研究を構成する研究者は、@総括・理論班、A地域班A・B、B域外要因班に分かれ、個別研究を行う。地域班は各地域のアジア主義のビジョンや構造、生成過程を、域外要因班はアジア主義の相互関係についての事例研究と理論化とを分析する。地域班は、運営の便宜上、A.東アジア・北東アジアとB.東南アジア・南西アジアとに分ける。本研究の基本は、各メンバーの個別研究と、班・全体での討論との連動にある。

班の編制と相互関係

 ABの各班メンバーは、各自のケースについて調査・分析を進め、成果を班ごとに研究会(連携研究者も参加)で比較・総合し、それを個別研究にフィードバックする。シンポジウム(第1・3年度)には研究協力者を含む全メンバーが集まり、各アジア主義の比較と関係を検討する。総括・理論班は全研究会に参加し、研究計画の執行・修正、方向性の統合の責任を持つ。松浦は全体、特に地域研究を、山室は特に統合理論の側面を、中島は特に域外研究を担当し、連携研究者の酒井は国際秩序論、遠藤はEUとの比較の立場から、理論的助言を与える。

研究代表者・分担者、連携研究者、研究協力者の検討対象国

 

平成20年度の計画

 初年度は、夏に札幌で全体の打ち合わせを兼ねたシンポジウムを開き、まず総括・理論班の松浦・山室・中島から、個別研究の指針・雛形としてそれぞれ、日本の「大東亜共栄圏」形成への政治経済史を中心としたアジア主義の通時分析、アジア主義形成に至る思想の基軸・連鎖・投企の理論的整理、多様な宗教・地域・言語から成るインドにおけるアジア主義研究の視角について報告し討論すると共に、地域班、域外要因班が各メンバーの対象をすりあわせ、方針を決定する。

 シンポジウムで、松浦は、幕末の薩摩藩の西郷隆盛・大久保利通の雄藩自立によるアジア主義ビジョンを明らかにし、それと同時期の中国広東省における孫文・陳炯明の連省自治による滅満興漢運動との連鎖を探り、ロシア・イギリスなどの域外要因に対抗した様相を相互比較する。孫文を支援した西郷の後継者頭山満や陸軍の「支那通」、さらに松井石根らと孫文・蒋介石らの中華復興(アジア主義の一種)との間の連携・競合の過程の中で、日本のアジア主義が「大東亜共栄圏」構想へと発展していく様相の解明を試みる。その後、外交史料館・国立公文書館・国会図書館・防衛研究所戦史部図書館などの国内史料を渉猟する他、台湾で国史館などの史料調査や孫文研究者らとの交流を行う。また研究会などを通じて、広東省を舞台とした単著『愛国主義の創成』(2003)を持つ吉澤らと情報交換・議論を行い、中国アジア主義の近代国家建設への変質が、日本政府の国家を基盤とする帝国拡大とだけではなくアジア主義と対立する過程や、日本のアジア主義がイギリスという域外要因との対立へと転化していく過程について、実証に基づく理論化を行う。さらに、戦後のアジア主義へとどう変質していったかについて、中国・東南アジア・アラブなどとの関連・比較を軸に、研究協力者らと検討する。その際、イギリス・アメリカ・オーストラリアなどの史料館も調査し、新聞・雑誌・一次史料などの諸史料と共に活用する。

 山室は、『思想課題としてのアジア――基軸・連鎖・投企』(2001)や『日露戦争の世紀』(2005)及び、その後の空間認識論研究の立場から、アジアにおけるアジア主義をどう分析していくか具体的事例に基づいて説明し、研究組織としての共通認識の方向づけを行う。

 中島は、インドについて、戦前のガンディー、タゴール、プラタープらによる、宗教・伝統的価値・移動(旅)といった共通点を持ちながら、海洋貿易ネットワークに乗ってインドを中心として影響力を持ったアジア主義ネットワークを研究する方向性について、シンポジウムで報告する。そこでの議論を踏まえ、その後、インドや日本における一次史料を開拓し、インドでの現地調査や聞き取り調査などを行い、インドのアジア主義について文献収集を積極的に進める。

 シンポジウムの後、各メンバーは本研究の中心である個別研究に着手し、史料調査や研究打ち合わせを頻繁に行う。本研究は開放的なものとし、ホームページを開設して学界に発信すると共に、シンポジウム・研究会に参加できないメンバーのためにも毎回の研究会などのペーパー及び記録・開催情報を載せ、外部研究者も含めた議論を行えるようなHPを開設する。研究会には、議論の活性化や研究交流・若手育成のため、内外の若手研究者・院生らを招聘・参加させる。

 本研究の根本は、研究分担者による個別研究と班・全体での討論との間のフィードバックにある。各メンバーは、国内外の文献・資料を渉猟すると同時に、適宜海外の文書館における調査を行うことで、担当地域についての既成とは異なるアジア主義像を摘出し、その構造(ビジョン)・基盤(ネットワーク)、生成過程、他のアジア主義との競合・連鎖・統合の過程についての仮説を提示する。これを基盤に、研究組織メンバー間の連携や研究会での議論を通じ相互の比較や関連についての思索を深め、さらに新たな材料を集めることでそれぞれの仮説と実証とを充実させる。

平成21年度の計画

 二年度目も、各メンバーが個別研究を進め、秋に京都で研究会を開く。地域班Aが中国・朝鮮を、地域班Bがタイ・ベトナムを中心に、域外要因班はソ連・中国・アメリカを中心に議論する。

 地域班Aの中国は、愛国主義や郷土意識を検討してきた吉澤が、清末から民国期を中心に、今度はアジア主義という文脈で検討を加える。吉澤は、中国・台湾などで史料収集すると共に、特に同時期のトルコ・蒙彊を扱う研究協力者のAydin やNarangoa らと討論をし、その比較の上に新しい中国のアジア主義像を打ち立てる。土屋は、日本アジア主義の協力者となった汪兆銘について、これまでの浩瀚な汪兆銘研究の蓄積の上に、アジア主義相互の思想連鎖や競合といった側面を重視しつつ、検討する。『竹内好という問い』(2005)で知られる研究協力者の孫歌は日中のアジア主義比較・交流、Duaraは「満洲国」研究の立場から、シンポジウムやHPのBBS、個別研究者との交流を通じて、中国アジア主義研究への理論的貢献を行う。連携研究者の高原は現代中国研究者として、研究会に参加し、アジア主義の今日的意義や将来に関する議論を行うと共に、研究協力者の二人と共に、海外史料調査や海外研究者との交流に赴く研究分担者への情報提供やコーディネートといった側面でも、研究に協力する。朝鮮については、姜が、朝貢体制から韓国併合に至る既成の朝鮮研究とは別に、前近代から現代に至る広い視野の中でアジア主義の立場から、朝鮮のアジア秩序意識を基層から分析する。これらの議論には、日本研究者も参加する。

 地域班Bは、メコン河を中心としたタイ・ベトナムについて、言語・民族・宗教などの亀裂を抱え、中国、アメリカ、ソ連など大国の影響を受けつつASEAN形成へと至る過程を、国内状況と関係づけて高橋が分析し、インドについては中島が20年度に続いて報告する。

 域外要因班は、冷戦期のソ連・中国要因をウルフが、アメリカ要因を、すでにASEAN形成でのオーストラリア要因について検討した実績『アジア太平洋地域形成への道程』(2004)がある大庭が検討する。

 また、この研究会の議論を活かした上で、各班を軸に、次年度における日本政治学会・国際政治学会などの学界における分科会・パネルに応募する準備を進める。

平成22年度の計画

 三年度目には、夏に札幌で研究会を開き、地域班Aがロシアと日本、地域班Bがインドネシアを含む島嶼部とオーストラリアを中心に、域外要因班は非同盟要因について報告を行う。

 地域班Aは、ロシアのユーラシア主義について浜が報告する。また、日本については中島が、頭山らの玄洋社、下中彌三郎、三木清らの流れを主に思想的に分析し、またアジアからの亡命者などとの連携運動に重点を置いて、戦前から戦後(世界連邦運動など)に至る流れを分析する。大賀は、イギリスで地域主義の比較研究を行ってきた経歴を生かして、日本のアジア主義をグローバリゼーションや地域主義、EUとの比較といった大きな文脈の中で位置付ける。大著『占領と平和』(2005)で戦後市民運動とアジアの関わりを扱った研究協力者の道場親信(日大非常勤)は、戦後左翼運動及びポスト・ベ平連などの市民運動によるアジア論を補足する。

 地域班Bは、アジア主義を考える時重要な島嶼部及び、英連邦からアジアの一員へと重点を移したオーストラリアについて、矢口(ハワイ)、後藤(インドネシア)、関根(オーストラリア)が連携研究者としてレビュー的な報告を行い、討論と共に比較研究の材料を提供する。域外班は、第三世界・非同盟としてのアジア主義を、宮城(インドネシア)、中島(インド)が分析を加える。なお、イギリス要因は、連携研究者の都丸がマラヤへの文化政策を、松本が英連邦諸国に移住したアジア人の差別政策に対する反発としてのアジア主義を、参考事例として報告する。

 また、秋に日本政治学会・日本国際政治学会などの分科会やパネルを利用し、各班が応募した企画を報告し、中間的成果を学界で議論する機会を持つ。その上で、東京で冬に大規模シンポジウムを持つ。ここで、すべてのメンバーが短時間でもそれぞれの研究成果の要旨を報告し、『相対化されるアジア主義』(仮題)として刊行される予定の論文集のために、構成・最終的方向性の調整を行う。そこでの方針及び研究会・シンポジウムで指摘された問題点などを踏まえて、各メンバーが改めて史料面・理論面での補強や修正を図り、論文作成のための作業を行うこととする。そのために、各メンバーはこの年、内外の史料館などで積極的に資料収集を行うこととする。

平成23年度の計画

 四年度目には、年末を目処に、総括・理論班を中心に実際の刊行に向けての調整・執筆・編集・校正作業を行う。各論文が揃ったところで総括・理論班が札幌で研究会を開き、総括者が本研究の最終的結論とも言うべき理論的分析を中心とした序章と、政策提言としての含意を持った結章を執筆する。

平成24年度の計画

 最終年度半ばには、研究成果としての論文集が刊行される予定である。これを踏まえて、書評会としての意味を含む研究会を秋に札幌で開催し、アジア主義・地域主義の専門家、海外の地域主義研究者、アジア共同体の問題に実際に携わる実務家を評者として招き、残された課題や問題点、新たな発展可能性を議論する。これと別に、成果報告会を札幌で講演会の形で開き、一般に公開する。その上で、新たな研究プロジェクト組織に向けて可能性と方向性を議論する。