ページ上に戻る ページ上に戻る

附属高等法政教育研究センター

menu

平成17年度 先住民をめぐる法と政治の諸問題

平成17年度法学研究科公開講座 先住民をめぐる法と政治の諸問題

 主催/北海道大学大学院法学研究科/附属高等法政教育研究センター

 国連の国際先住民年を経て世界の各地域に住む先住民の人々の権利や利益、あるいは福祉の保障は徐々に進みつつありますが、グローバリゼーションが急速に進展する中でそれは必ずしもまだ十分とは言えません。とりわけ北海道の場合には、いわゆるアイヌ新法が成立したとはいえ、アイヌの人々の権利保障や文化振興が十分に展開されているというわけでは必ずしもなく、今後の法整備や政策の早期の展開が待たれるところです。

 そこで、この公開講座では、北海道のアイヌの人々の現況をも念頭に置きながら、先住民の人々をめぐる法や政治の問題を理論的あるいは比較法学・政治学的に考察し、先住民の人々が抱える法的・政治的問題や今後の議論枠組などを整理して、さらなる法整備や政策立案のための基本指針を探ってみたいと思います。個人の権利を守り、民主的な決定を行う枠組みとしての近現代の立憲主義の法と政治がどこまで先住民のために役立てるものなのか、あるいはどこにその限界があるのか、この枠組みに代わる新たな見方はあるのか、など、個人ばかりでなく民族集団の多元性がいっそう鮮明になりつつある21世紀社会での共生の枠組みのあり方を皆さんと共に考えてみます。

権利の言語と先住民

講師:北海道大学大学院法学研究科 附属高等法政教育研究センター長・教授 長谷川晃

 近・現代の法と政治の枠組みを成した立憲主義においては、個人の権利の擁護がその中核となった。そこでは信教の自由を中心としながら、政治的自由権の保障が重視され、さらに20世紀になってからは社会保障の充実の見地から社会権や参加権などの保障も加わるようになった。しかしながら、このように有意義な権利の概念も基本的には個人に定位したものであり、20世紀の後半からは先住民のような民族集団もまた権利保障の対象ないしは主体となりうるのか、多くの議論がなされて来ている。この講義では、権利概念の基本的意義、個人権と集団の権利との相異、国民国家と先住民との確執、グローバリゼーションと先住民との相剋、集団における個人の自由、そして伝統文化の保全などの問題に具体例を交えて触れながら、先住民の権利の意義や射程を考えてみたい。

先住民族と憲法・民主主義」

講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 常本照樹

 民主主義とは「良いもの」だと考えられているようである。しかし、先住民族にとっても常に「良いもの」なのだろうか。多数決を基本とする民主主義によって、少数者である先住民族の権利・利益を実現することは容易ではないようにも思える。基本的な価値観や生活様式が異なるときはなおさらである。他方、カナダやアメリカ、オーストラリアなど、先住民族の権益を認めているような国々もある。これらはみな典型的な民主主義国であるのに、なぜそれが可能だったのだろうか。アイヌ文化振興法、二風谷ダム判決、イオル(伝統的生活空間)再生構想など、アイヌ民族にかかる法制度の動きを具体的に検証しながら、もう一歩を踏み出すためには何が必要であるのか、上記の国々の例や国連の「先住民族権利宣言」作りなどをも参考にしつつ考えてみたいと思う。

アイヌ民族の所有権問題–民法学の立場から

講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 吉田邦彦

 アメリカ所有法学においては、先住民族の権利の収奪・征服の上に、入植者による近代所有システムが成立していることについて、多くの議論がなされるに至っている。わが国のアイヌ民族の所有問題についても、同様の問題があるにもかかわらず、未だ充分に民法学者の関心を集めているとは言い難い。しかも、近時訴訟で争われているいわゆる共有財産返還に関する問題は、その延長線上の深刻なアイヌ民族の人々の所有権侵害ないし収奪の問題とも見うる。ここでは、このような問題意識から、第1に、明治維新後のアイヌ民族に対する土地政策がいかなるものであったのか、第2に、そこにおけるアイヌ民族の所有権問題、とくに共有財産の返還の問題分析、第3に、知的所有権の問題、第4に、問題解決の方途などを論ずることとする。

先住民の歴史と政治

講師:北海道大学公共政策大学院・教授 辻康夫

 先住民問題は、多くの国に存在するが、カナダは、この問題に正面から向き合ってきた国のひとつであると言える。特に近年、カナダは先住民の固有の文化・社会を尊重する方針を強め、さまざまな施策を行っている。そこで今回は、カナダにおける先住民問題の取り扱いを検討して、先住民をめぐる政策のあるべき姿を考える手がかりにしたい。講義では、まず、カナダ史について一般的な概観をおこない、それとの関係で、先住民問題の起源および沿革を検討する。カナダにおいては歴史の理解が、現在の政策に大きな影響を与えている点が特徴である。次に、先住民の社会の現状およびそれが抱える問題点について概観し、これが全国レベルの政治課題にどのように翻訳されるのかを概観する。これをふまえて、今日検討されている政策について概観し考察を加える予定である。

先住民の権利をどう保障するか–台湾先住民政策からの示唆–

講師:北海道大学大学院法学研究科 附属高等法政教育研究センター・教授 鈴木賢

 中日ドラゴンズの元投手・郭源治、歌手のアーメイこと張恵妹を知っているだろうか?二人は台湾の先住民族出身で、日本植民地統治時代には高砂族とか「生蕃」と呼ばれていた人たちである。現在では11族に分類される台湾先住民族は、全人口の2%弱を占めている。圧倒的マジョリティの漢民族よりもはるか昔から台湾に住み、独自の文化を育んできた先住民族。台湾では尊敬の念をこめて「原住民」(元から住んでいた人々)と呼ばれている。近年、民主化の進展と台湾アイデンティティの高揚の中で、改めて先住民族は台湾を構成する4大エスニック・グループのひとつとして位置づけられ、権利保障のための特別な施策が積極的に展開されるようになった。台湾先住民族の現況と政府が用意する施策について紹介し、日本のアイヌ民族と対比してみたいと思う。

開催概要

1. 開講日程(時間:午後6時30分~午後8時30分)

第1回 平成17年7月28日(木) 権利の言語と先住民
北海道大学大学院法学研究科 附属高等法政教育研究センター長/教授 長谷川晃

第2回 平成17年8月4日(木) 先住民族と憲法・民主主義
北海道大学大学院法学研究科教授 常本照樹

第3回 平成17年8月18日(木) アイヌ民族の所有権問題–民法学の立場から
北海道大学大学院法学研究科教授 吉田邦彦

第4回 平成17年8月25日(木) 先住民の歴史と政治
北海道大学公共政策大学院教授 辻康夫

第5回 平成17年9月1日(木) 先住民の権利をどう保障するか
–台湾先住民政策からの示唆–
北海道大学大学院法学研究科 附属高等法政教育研究センター教授 鈴木賢

2.実施会場

北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟 W301室
(札幌市北区北9条西7丁目)

3.受講資格

18歳以上の方であれぱどなたでも受講できます。(学歴は間いません。)

4.定員

50名(定員を超えた場合は抽選になります。)

5.申込要領

(ア)申込期間

平成17年6月13日(月)から平成17年7月25日(月)まで(土曜日・日曜日及ぴ祝日を除く)毎日午前9時から午後4時30分まで

(イ)申込場所

札幌市北区北9条西7丁目
北海道大学法学研究科・法学部庶務係

(ウ)申込手続

受講申込書(コピー可)に必要事項を記入のうえ、直接又は郵送でお申し込みください。
(受講者証は公開講座初日にお渡しします。)

6.受講料

(ア)金額

3,500円

(イ)納付方法

公開講座初日の平成17年7月28日(木)に受付へ納めてください。
なお、納入された受講料はお返しできません。

7.修了証書

4回以上受講した方には、修了証書を授与します。

8.その他

この講座についての照会は、下記で取り扱っております。
〒060-0809 札幌市北区北9条西7丁目
北海道大学法学研究科・法学部庶務係 電話011(706)3119(直通)

●申込場所及び実施会場案内図

申込場所・実施会場
地下鉄「北12条駅」下車徒歩10分(約600m)
中央バス「北大正門前」下車徒歩5分(約300m)
JR札幌駅「北口」より徒歩13分(約800m)
※車での来学はご遠慮願います。

更新日 2016.04.12