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附属高等法政教育研究センター

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平成21年度 経済危機と新しい生活保障


平成21年度法学研究科公開講座 経済危機と新しい生活保障

主催/北海道大学大学院法学研究科/附属高等法政教育研究センター
後援/札幌市教育委員会
(道民カレッジ連携講座「教養コース」)

―経済危機と新しい生活保障―

 2008年の秋から未曾有の経済危機が世界を覆っています。当初影響は軽微と見られた日本でも、2009年1月から3月のGDPの落ち込みは、年率換算でマイナス15.2%となり、統計上は過去に例のない下げ幅となりました。ただし、私たちが今直面している生活の厳しさ生き難さは、必ずしもすべてこの金融危機によるものではありません。大きな歴史の転換のなかで、経済や社会、働き方の変化に、制度が対応していないことこそが背景にあります。

 この講座では、経済危機をきっかけに浮上した雇用、金融、社会保障の新しい課題をさぐり、また政治や思想の問題ともむすびつけながら、生活の安定をいかに回復していくかを考えます。見通しの悪いトンネルをいかに早く抜け出るか、その先に、経済社会の変化に対応した新しい生活の質やライフスタイルを展望できないか。法学研究科・法学部としての独自の切り口から論じていきます。

北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター長
宮本太郎

「雇用と社会保障をどう連携するか-生活保障という視点-」

講師:北海道大学大学院法学研究科附属高等法政策教育研究センター・教授 宮本太郎

 いわゆる派遣切りの実態を見れば分かるように、昨年来の経済危機の打撃をもっとも強く受けているのは、セーフティネットにカヴァーされていない非正規層です。非正規層の増大は、派遣法の改正などを直接のきっかけとしますが、他方で、これまでの労働市場が根本から変わってしまったことの証でもあります。すなわち、すべての人が一日8時間、40年間、同じ職場で働き続けるというかたちはもはや過去のものとなりつつあります。労働生産性の上昇やグローバル化に起因するこうした変化を、単に生活への打撃にしてしまうのではなく、人生をより多彩で実りあるものとするために活かせないでしょうか。

 この講義では、雇用保障と社会保障の連携、すなわち生活保障という視点から、労働市場の変容がもたらす「ピンチ」と「チャンス」について検討し、北欧の事例なども参考にしながら、霧が晴れた後の新しい社会像を考えます。

「社会保障制度の危機-二重構造の功罪-」

講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 加藤智章

 本来であれば、人々が直面するいくつかの危機に対応するシステムの社会保障制度が危機に瀕しています。
 日本の社会保障制度は、どのような経緯でいかなる制度を作り上げてきたのか。それが何故、人々の生活をうまく支えられなくなっているのかを考えていきたいと思います。
 以下のような項目・順序で検討していきたいと思います。
   1.社会保障制度の成り立ち
   2.社会保障制度の構造と特徴
   3.新たな社会保障制度像

「金融危機の背景と消費者保護・投資者保護」

講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 瀨川信久

 生活保障の具体的な重点は、人によって異なります。働く世代にとっては雇用の確保であり、働き終えた世代にとっては年金・貯金等の価値の確保でしょう。いずれの世代にとっても安定した住居は生活保障の基本です。

 今回の経済危機は、サブプライムという住宅ローンの破綻から発しました。生活基盤を作るためのローンが破綻し、それが、1980年代以後に形成された市場型間接金融の仕組みを通して世界経済を揺るがし、大量の失業を生み出すことになりました。

 この市場型間接金融の背景は、「貯蓄から投資へ」の動きと同じです。わが国では、住宅政策が借地権・借家権の保護から持家促進政策へ転換された延長線上で、金融資産選択が貯蓄から投資へ移動しました。その投資促進の中で、金融商品取引法などの投資者保護制度が進められているのです。

 この講義では、経済危機と生活保障の関係を、雇用、社会保障とは別の局面で考えます。

「雇用を守るワークルール」

講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 道幸哲也

 長期化する不況下にあって、労働生活のセーフティネットは安定した雇用と生活のできる賃金です。
 この講義では、雇用保障の観点から、最近の関連した裁判例の傾向と問題点を検討します。
 具体的には、①退職の強要をめぐる紛争、②解雇規制のあり方、③有期雇用の裁判を取り上げます。
 ①については、「辞める」と「辞めさせてください」の違い、退職届けの撤回が許されるかについて、②では、協調性の欠如を理由にして解雇できるか、③では、3月間の雇用期間を更新したら、会社は更新を拒否しえなくなるか、等の身近な問題をわかりやすく解説します。

「生存権再考」

講師:北海道大学大学院法学研究科附属高等法政策教育研究センター・教授 長谷川晃

 グローバルな経済危機に発した私たちの生活不安は、雇用や所得は言うまでもなく、教育や医療に至るまで深まる一方です。その半面では、アメリカを中心に、日本を含む先進各国政府は政治的対応を急ぐと共に、国際協調の下に難局を乗り切ろうとしています。
また、事態を憂える多くの市民も様々な活動を通じて困窮する人々を支えようと試みています。
 この講義では、この重大な状況を見据えながら、経済危機と生活保障における法と権利の根本的な意義と役割、そしてその現実的可能性を再考することに目を向けたいと思います。
 特にそこでは、現代法哲学における正義と平等の理論の展開をわかりやすく紹介し、正義、平等、人間の尊厳、善き生活の追求といった理念と私たちの生存・生活のあり方とをつなげながら、これらと日本国憲法の大きな柱でもある生存権との関わりを改めて解き明かして、経済危機における生活保障の法的指針を探ってみたいと思います。

開催概要

1. 開講日程(時間:午後6時30分~午後8時30分)

第1回 平成21年7月23日(木) 「雇用と社会保障をどう連携するか-生活保障という視点-」
講師:北海道大学大学院法学研究科附属高等法政策教育研究センター・教授 宮本太郎

第2回 平成21年7月30日(木) 「社会保障制度の危機-二重構造の功罪-」
講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 加藤智章

第3回 平成21年8月6日(木) 「金融危機の背景と消費者保護・投資者保護」
講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 瀨川信久

第4回 平成21年8月20日(木) 「雇用を守るワークルール」
講師:北海道大学大学院法学研究科・教授 道幸哲也

第5回 平成21年8月27日(木) 「生存権再考」
講師:北海道大学大学院法学研究科附属高等法政策教育研究センター・教授 長谷川晃

2. 実施会場

北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟 W301室
(札幌市北区北9条西7丁目)

3. 受講資格

満18歳以上の方であればどなたでも受講できます。

4. 定員

50名

5. 申込要領

(ア)申込期間

平成21年6月23日(月)から平成21年7月10日(金)まで(土曜日・日曜日及ぴ祝日を除く)
  午前9時から午後5時00分
なお、受講者数に限りがありますので、申込期間内であっても定員に達した場合には申込を締切る場合があります。

(イ)申込場所

札幌市北区北9条西7丁目
北海道大学法学研究科・法学部(庶務担当)

(ウ)申込方法

受講申込書(コピー可)に必要事項を記入のうえ、直接または郵送にてお申し込みください。
(受講者証は所定の振込用紙のE票(郵便振替払込受付証明書・北海道大学受付証明書)と引換えに公開講座初日にお渡しします。)

6. 受講料

(ア)金額

3,500円

(イ)納付方法

受講申込後に郵送します所定の振込用紙ご利用の上、銀行または郵便局によりお振込み願います。お振込みは必ず窓口で行い、E票を受領してください。(E票は公開講座初日に受講者証と引換えいたしますので、ATM(現金自動預払機)は利用しないでください)
なお、納入した受講料はお返しできません。

7. 修了証書

4回以上受講した方には、修了証書を授与します。

8. その他

(ア)この講座に関するお問い合わせ先

北海道大学法学研究科・法学部(庶務担当)
〒060-0809 札幌市北区北9条西7丁目 電話011-706-3119(直通)

(イ)申込場所

申込場所および実施会場の略図は別図のとおりです。(車での来学はご遠慮願います)

(ウ)備考

道民カレッジに入学されている方で、本講座を受講し、修了証書の交付を受けた方は、道民カレッジの単位を取得することができます。(本講座:10単位)

●申込場所及び実施会場案内図

申込場所・実施会場
地下鉄南北線「北12条駅」下車徒歩10分(約600m)
中央バス「北大正門前」下車徒歩5分(約300m)
JR札幌駅「北口」より徒歩13分(約800m)
※車での来学はご遠慮願います。

更新日 2016.04.12