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附属高等法政教育研究センター

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 刊行物・活動報告詳細

J-mail No.4 2001 Spring

CONTENTS・・・・・・・・・・・・Spring,2001
●J-Review:田中秀征
●Research Update:東海林邦彦/今井弘道
●Juris Report
●Essay 私のユートピア:北村喜宣
●Art&Culture【読む/聴く】:北見良嗣/林田清明
●Schedule&Information
●Academia Juris 活動報告/Staff Room

 

J-Review

「政治と行政の信頼を取り戻せ」

元経済企画庁長官●田中秀征

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 今回の旧労働省、政界、そして“公益法人”をめぐるKSD事件は、この十年の政治の改革、行政の改革の不毛さを何よりも如実にもの語っている。一体、政治改革とは何であったのか、行政改革とは何であったのかと大声で問い直したくなるではないか。
 おびただしい時間と金を投入した政治改革の直接の契機となったのはあのリクルート事件であった。にもかかわらず、それよりさらに質の悪いKSD事件を阻止できなかった。また、今回のような事件を防ぐために、「行政改革」はどのような具体的措置を施したのであろうか。これについても効果的な改革は施されていないのである。昨年のいわゆる「あっせん利得処罰法」も骨抜きの立法に終わってしまった。
 この十年、経済と財政の立て直しができなかったにせよ、政治と行政の抜本的な改革が進んでいれば不毛な十年とはならなかった。政治と行政が信頼を取り戻し、指導力を発揮するようになれば、社会経済の再建はいずれ一気に進むことが期待できる。
 ところが、二兎を本気で追わなかったため、全く十年を無為に過してしまったことになった。政治の改革も行政の改革も、単に器の改革でお茶を濁し、中身の改革に手を着けなかったのである。大臣は入れ替わるためにあり、国会は汚職追及のためにあるのなら、内閣も国会も無用だと言われても仕方がない。
 野党も、憲法論議などに夢中にならず、今最もなすべき課題に捨て身で取り組んでほしい。「失われた十年」の責任は与党だけでなく野党にもある。

 

Research Update

「現代日本・民事法理論体系・原論」

東海林邦彦●民法 教授

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Q:なぜ(1)「民事法」、(2)「理論体系」、(3)「原論」?

A:(1)刑事法や規制行政等の国家権力的統治の機構・手続・行為に関する国家法(私は第三法領域と呼ぶ)以外のすべての法領域、つまり主として市場における経済活動に関する法規範を扱う民事法Ⅰ、経済的価値・関係以外の人格的価値ないし無償的関係等をめぐる市民間法規範、家族における特殊な人格的ないし財産的関係にかんする法規範等を扱う民事法Ⅱ、の各「民事法」類型領域毎の、(2)しかも(現行実定法の法典毎分類に閉塞することなく、またその解釈・整序に自足することなく)あるべき法制度、あるべき立法・法改正の具体的設計・提言をも目標とする「理論体系」構築のための、(3)基礎理論=「原論」的研究作業としての上記各類型領域を横断する(基本問題毎)検討作業。

 

「東アジアと法哲学」

今井弘道●法哲学 教授

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 私は今、現在の世界は「近代」文明を漸次的に克服していきながら、それに代わる新しい文明を構築していくという転換期にある。そして、その「近代」とは、「生産力主義的人間中心主義」・<ウェストファリア体制>に基礎をおく<主権国家>とそれに保護された「産業社会」の相互促進的発展・欧米中心主義=普遍主義を主たる内容と考えている。
 その上で、私の目下の作業は、(1)東アジアの現在の法文化・政治文化にとっての課題の検討と、(2)第二次大戦に至る日本の思想家における「近代」理解・国家理解の批判的回顧という二つの軸をめぐっている。無論、この(1)(2)は、内在的関連にある。この問題の検討を通して「近代」の克服をアジアを軸に考えること、このことを私は最もホットな法哲学的課題だと考えている。

 

Juris Report

「どこへいく、日本の民主主義 part3
 政権交代は可能か?」

 法学研究科附属高等法政教育研究センターでは、1月17日、法学部8番教室において、連続シンポジウム「どこへいく、日本の民主主義」の第3弾として、民主党幹事長の菅直人衆議院議員を招いて講演会を開催した。折しも通常国会の開会前の時期で、疑獄事件がマスコミをにぎわせていたタイミングということもあり、当日は本学の学生、教職員に加え、遠くは留萌や十勝からも多くの市民が参加し、会場は350人ほどの聴衆であふれかえった。
 菅氏はまず、基調講演の中で日本の議会制民主主義の現状について、自らの厚生大臣としての経験をふまえながら、憲法の理想とする国民主権の政治からほど遠いものであることを説明し、本来の意味における政治主導によって内閣を運営するための改革について持論を展開した。そして、今年の参議院選挙に向けて政治の転換を果たすために、野党としての戦略を披瀝した。
 後半は、山口センター長との対談を行った。あらかじめ学生から電子メールで提出された菅氏及び民主党に対する厳しい質問を直接ぶつけ、民主党や野党の課題について率直な意見交換が行われた。民主党の主張が鮮明に見えないという質問に、菅氏も懸命に応戦し、菅氏の踏み込んだ発言は新聞等でも報道され、政界でも波紋を呼んだ。日本の政治を身近に感じる格好の機会となるとともに、21世紀の日本の政治課題を考える上でも貴重な素材を提供できた。

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「地方分権時代の地域政策 」

 センター附属研究会である「地域の自律に向けた政策金融のあり方の研究会」における研究プログラムの一環として、地域分権時代の地域政策を考えるシンポジウムを、2月23日、学術交流会館で開催した。シンポジウムでは、京都大学経済研究所佐和隆光教授が分権時代、成熟期の地域政策を考える視点・価値観の再構築に関する基調講演を行い、続いて山口二郎センター長のコーディネートの下で、PHP総合研究所荒田英知主任研究員、日本政策投資銀行地域政策研究センター石井吉春副所長、ニセコ町逢坂誠二町長、佐和隆光教授を参加者とするパネルディスカッションが展開された。パネルディスカッションでは、地域を取り巻く経済・社会環境の変化を踏まえ、「地域の均衡ある発展」、「ナショナル・ミニマム」の達成を目標に中央集権型で進められてきた戦後半世紀の地域政策を見直し、地域の責任と選択に立脚した自律化への政策とは何かについて議論が展開された。また、その際重要な点として、経済成長を第一に求める価値観の見直し、住民と共に政策を考え形成する仕組みの必要性などが指摘された。

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「環境政策と市民の役割」

 3月24日、法学部8番教室において、公開シンポジウム「環境政策と市民の役割」を開催した。基調講演は、ドイツ在住のジャーナリスト、今泉みね子氏、パネルディスカッションには今泉氏のほか、小野有五(北大地球環境科学研究科教授)、畠山武道(本研究科教授)、本田宏(北海学園大学講師)の各氏が参加し、山口センター長がコーディネーターを務めた。
 
 今泉氏はドイツにおける自然エネルギー開発やごみ減量の政策が住民参加によってどのように展開したかを報告し、法制度の形成を待つのではなく、市民にできることを積み上げ、立法をリードすることの必要性を説いた。また、後半のパネルディスカッションでは環境政策の向上のための大学や研究者の役割、市民参加の具体的な進め方、環境教育のあり方などをめぐって活発な議論が行われた。さらに、ドイツ社会民主党・緑の党連立政権における環境政策の展開に関する最新の情報が紹介され、きわめて興味深かった。
 また、会場からも多数の質問が寄せられ、参加者の関心の高さがうかがわれた。

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Essay

私のユートピア(3)

行政法教育と地方分権の近未来
北村 喜宣 KITAMURA YOSHINOBU
●上智大学教授(横浜国立大学より移られました)

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 自治体職員の半分くらいは、マスターの学位を持つ。行政法や政策科学の知識と実務は、かなりの程度、大学院で修得している。カリキュラムのなかにはクリニックも組み込まれているので、それなりの実務疑似体験もあり、ほぼ即戦力である。学界・法曹界・官界からもサポートがされ、行政全体の法務能力はめざましく向上する。
 条例に対する期待が高いが、国の法令の規律密度は相変わらず高い。しかし、自治体職員は、大胆かつ周到な解釈をして、自治体の福祉向上のための条例案を作成する。一方、市民の法務能力も向上している。行政の条例案に対して、代替案がいくつか提示され、それらがオープンな場で議論される。議会でも、参考人制度などが活用されて、様々な角度からの議論がされる。自治体の「国離れ・ぎょうせい離れ・第一法規離れ」は、十分に進んでいる。
 もちろん、こうした条例を違法だと思う霞が関は、個別処分をとらえて是正の指示なり要求を出してくる。自治体は、国地方係争処理委員会にうってでて争う。高等裁判所・最高裁判所と論争は継続し、判決が出される。自治体としては勝ったり負けたりであるが、こうした過程をつうじて、地方分権時代にふさわしい条例論が構築される。そうするうちに、法律の内容も、国と自治体との役割分担に十分配慮したように変容している。そのもとで、国と自治体は、それぞれの役割分担を果たすため、国全体のコスト・パフォーマンスは、格段に向上し、国家は、ますます繁栄する。当然、行政法学界も発展し、司法試験科目には、当然のことながら、行政法が(華々しく)復活する。その内容は、昔あったような出題内容ではありえないことも、これまた当然である。
 北海道大学大学院法学研究科と高等法政教育研究センターは、このような動きを支えかつリードする研究・教育の中心として、自治体や他の研究機関と太いネットワークを確立し、ますます発展し続ける(ヨイショッ!)。

 

Art&Culture

【読む/BOOK

『金融工学とは何か?「リスク」から考える』
刈谷武昭著 岩波新書 2000年

金融工学というと、デリバティブスとその基礎にある難しい数式(例えば、オプションのブラックショールズ・モデル)を思い浮かべる方が多いと思う。そして、本書のタイトルから、また数式は使わないが実は難しい本か、と想像するするかもしれない。しかし、本書は「新しい金融商品」で使われている最先端の理論に発想を得て、我が国金融の混迷の背景などについて大胆に議論を整理するなど、より視野の広い本となっている。語り口は平易で、最近誰しもが懸念を抱く「グローバリゼーション」の意味についても、明快に説明。金融制度でなく金融機能の視点の重要性を説く筆者の論旨は、今後の金融システムや諸制度のあり方を考えるうえで傾聴に値しよう。

北見良嗣

book

【聴く/JAZZ CD】

『A.ブルックナー交響曲第9番』C.シューリヒト指揮
ウィーン・フィルハーモニー
1962年録音

 ベートーヴェンの対自的世界、モーツァルトの人間臭さから離脱して、今は、ブルックナーの神の世界というあたりで気持ちは均衡している。お勧めは、シューリヒト指揮ウィーン・フィルによる“ブル9”。抑制が効いていて、しかもダイナミック! 天上の音楽である。
 さて、現実は音楽も政治である。170万都市でFM局3局はあまりにも貧しい。トークにポップス、野球中継など現行のオムニバス方式では多様なニーズに応えきれていないので、専門局がぜひ必要である。アメリカのように大学にも1局はあるべきだし、各都市にAM局も含めて少なくとも20局以上は必要だろう。この2点を電波監理審議会に放送法の規制緩和を望みたい。なぜ寡占局なのか、判りますね?

林田清明

Schedule&Information

●研究会活動 金融法研究会

 大量の不良債権と金融システム改革という2つの問題を抱えて、日本経済は先の見えないトンネルの中にいる。先が見えないのは、これらの課題が金融構造の変化と結びついているのに、その構造変化の全貌が見えないからである。本研究会は、この構造変化を、法律学、経済学、金融論という複合的な視点から検討することを目的として1999年秋に設立された。その後、鹿野嘉昭(同志社大学経済学部教授 21世紀政策研究所客員特別研究員)、大垣尚司(アクサニチダン生命保険専務執行役員)に参加いただき貴重なご教示をいただいている。また、日本銀行出身の北見良嗣教授、国際倒産法に詳しく米国での弁護士経験のあるケント・アンダーソン助教授の存在は、共同研究の視野を拡げている。
 これまでに、デリバティブ、サービサー法、国際倒産、民事再生法、改正SPC法等々につき20回に及ぶ研究会を開催したほか、サービサー制度の実態や、アメリカの資産流動化の現況を調査した。当初は金融問題全般を検討したが、資産流動化・証券化が問題の焦点だという認識に至り、今はこの問題を重点的に検討している。2001年の夏には、この問題で小シンポジウムを開催する予定である。

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Academia Juris 活動報告

●3月6、7日 「国際ワークショップ 東アジアにおける法学の21世紀的課題」を開催。中国、韓国、台湾から多数のゲストスピーカーを招いて、活発な討論を行った。

●3月10日、加藤紘一衆議院議員を招いて、プロジェクトセミナー「自民党の現状と課題」を開催(政治研究会と共催)。昨年11月の「加藤政局」における「敗因」の分析など、率直な議論を行い、日本政治の現状と問題点について理解を深めることができた。

●昨年11月に、金子勝、高橋哲哉両氏を招いて開催したシンポジウム「21世紀の政策アジェンダ」の記録が、岩波ブックレット『グローバリゼーションと戦争責任』として出版された。好評発売中。

 

質問に答えて

嬉しいことに、毎回公開シンポジウム参加者から多数の質問・意見をいただいています。その中で、「異なる意見による討論も必要ではないか」という指摘がありました。確かに、当センターの企画は特定の見解の宣伝を図るものではありません。日本の今を考える上で最も面白い論客を意見や立場に関係なく招聘し、熱い議論ができるよう努力したいと思っています。自民党の現状を論じた10月シンポジウムはその手始めでした。

 

Staff Room●Cafe Politique

M a s t e r●マスターの独り言・・・年を取るほど時間がたつのを速く感じるようになるというが、この一年は本当にあっという間に過ぎ去った。1年目ということでがんばって、おもしろい企画をいくつも出来たことはうれしいけれど、マスターが獅子奮迅でなければ動かない組織は長持ちしない。フィールドで動き回るよりも、ベンチで選手を動かす術を学ばねばと思うこのごろである。それにしても、監督という柄ではないのだけれど。

常連/録音係●1月の菅直人さんを招いた公開シンポジウム。会場となった教室は講義で使っているだけあって、教壇や壁はチョークの粉で真っ白、ゴミは落ち放題となんという大学らしさ。しかし、その狭さが幸いして聴衆の目線で菅さんとセンター長の討論が繰り広げられた。いつもはいささか遠く感じている国政を間近に感じたひとときであった。 

常連/留吉●某日、センターの将来を占って井(せい)の三爻変を得る。井戸は汲んでも汲んでも涸れず、往来する人を誰でも養ってくれる(ここから賢人を養うの意が派生)。しかし管理を怠れば、つるべは朽ち果て水を汲むこともかなわなくなる。「井戸をさらってきれいにしたのに誰も飲んでくれない。心が痛む。王に人を見る目があるなら努力も報われ、互いに幸せになれるだろう。」んんんんん、絶妙、、かも。

名誉?!G a r c o n●カフェ・ポリティークは満1歳のお誕生日を迎えた。実は「当センターが形式だけではない、生きた学問のサロンになりますように!」という願いがこのカフェ誕生のきっかけ。それにしても、私はどうやら詐欺にあったらしく、秘書ごっこをするつもりが何故かマザー・テレサごっこに・・・。そう、本当のところ90%ボランティア状態で、本業を脅かすほど激しくテレサな日々であったのだ。だがプチ公僕として学問を市民に還元したく、働いた充実感はある。だから、この1年を返せとは言わない。そのかわり法学研究科の皆さん、どうか素敵なカフェに育ててほしい!でないとスナイパーを送りこむのだぁ。ハッハッハ。

 

Hokkaido University ●The Advanced Institute for Law and Politics

J-mail●第4号
発行日●2001年4月25日
発行●法学研究科附属高等法政教育研究センター[略称:高等研]

〒060・0809 ●北海道札幌市北区北9条西7丁目
Phone/Fax●011・706・4005
E-mail●academia@juris.hokudai.ac.jp
HP●https://www.juris.hokudai.ac.jp/~academia/

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公開シンポジウムのお問い合わせは Phone●011・706・3119まで

【Academia Juris】