北海道大学大学院法学研究科は、社会の様々な問題に対処するために、法学・政治学の分野を中心に先端的な研究を行うことを目的として、2000年4月に、教員定員17名(教授6名、准教授3名、助教8名)を擁する附属高等法政教育研究センターを設置しました。本センターは、統治とデモクラシーの新しいかたちを探る「ガバナンス部門」、現代社会の変化にともなう法現象のダイナミクスを考える「法動態部門」、市場、文化、政治の国際的広がりを分析する「グローバリゼーション部門」から構成され、それぞれの部門に専任教員を配置しています。さらに、本センターは、その研究成果を社会に発信・還元することにも力を入れてきました。

設立から20年以上が経過し、予想外のパンデミックも経験した現在、グローバル化はさらに進み、一国のみにしか見られない社会問題はむしろ稀になりました。しかし、それは単純な均質化を意味せず、問題の現れ方は社会により多様であり、一層複雑化した困難な課題に取り組む、新たな法学・政治学の研究が求められています。また、情報通信技術の発達によって、知の伝達のあり方も一変しました。全世界に向けて研究成果を発信することが容易になった一方で、根拠のない「知的」情報もインターネット上に氾濫し、知の質を見極めることが肝要になってきています。このような状況下で、本センターは、日本社会のみならず国際社会にも広く目を向け、問題を徹底的に分析してその解明や解決をリードする研究、換言すれば、当該問題に関して世界のトップ水準にある研究を行い、その成果を社会に還元すること、とりわけ高度な知的能力を備えた次世代の育成の一助とすることを目指したいと思います。

18歳人口の減少や財政難、基礎研究の軽視など、日本の大学を取り巻く環境が厳しさを増している中で、質の高い研究を生み出し続け、学問の灯を消すことなく次世代へと伝えてゆくことは、現実には決して容易ではありません。研究者の側のたゆまぬ研鑽が必須であることはもちろんですが、その成果を受け取る学生や市民の方々の理解も欠かせません。

本センターの活動に、多くの方々のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

高等法政教育研究センター長
桑原 朝子
2023年5月