平成11年度法学研究科公開講座 情報公開を考える

 永年の懸案だった情報公開法がようやく成立しました。この法律はわが国の政治・行政のあり方を根本から変革する可能性を秘めています。

 戦後の民主主義改革によって、国民は国政の主人公になったはずです。しかし現実には、政府が重要な情報を独占し、国民には都合のよいことしか知らせない、という状況が続いてきました。十分な情報を持たなければ的確な判断をおこなうこともできません。ですから民主主義も名目にとどまっていたといわなければなりません。

 情報公開の必要性はまず先進的な地方自治体で自覚されました。現在までに多数の情報公開条例が制定されてきており、大きな成果を上げています。今回成立した情報公開法は、国の行政文書の開示を求める権利をすべての人に保障しています。それによって国政に対する国民の参加を実質的なものとすることが期待されているのです。

 情報公開を進める動きが見られるのは政治・行政の場だけではありません。規制緩和の流れの中で、企業もまたその業務内容を公開することを求められています。教育や医療の場でも、これまでの行きすぎた秘密主義が批判され、生徒や患者本人への情報公開を求める声が高まっています。

 今回の公開講座では、こうした最近の動向に着目し、情報公開をめぐる諸問題を取り上げることにしました。権利は実際に用いなければ何の意味も持ちません。今回の公開講座が参加者のみなさんにとって「知る権利」を積極的に行使する一助となれば幸いです。

開催概要

開講日程

第1回 平成11年8月26日(木) 情報公開法~その意義と課題
教授 岡田信弘(憲法)

第2回 平成11年8月30日(月) 情報公開条例の判例を読む
助教授 村上裕章(行政法)

第3回 平成11年9月2日(木) 環境情報の公開
教授 亘理格(行政法)

第4回 平成11年9月6日(月) 企業の情報公開
教授 林たつみ(商法)

第5回 平成11年9月9日(木) 教育情報の開示
教授 中川明(教育法)

第6回 平成11年9月13日(月) 医療情報開示とインフォームド・コンセント
教授 吉田邦彦(民法)