司法試験合格発表に際して法科大学院長からのメッセージ

 今年度の司法試験に合格した皆さんに、心からお祝いを申し上げます。

 昨年度は、コロナ禍の下、司法試験の実施時期が延期されるという異例の事態となり、合格発表も今年の1月20日に行われたばかりでした。それから次の司法試験までは4か月足らずでしたから、前回も受験した方にとっては、とりわけタイトなスケジュールだったことと思います。今回初めて受験された方も、コロナ禍の影響で急に日程が変更になるかもしれないという不安感の中での試験準備は大変だったことと推察いたします。こうした困難を乗り越えて合格された皆さんに、改めて敬意を表したいと思います。

 皆さんには、すでに理想とする法曹像があることでしょう。これからは、徐々にその法曹像に近づけるように、人間力(より正確には、人間力のうち、知的能力要素以外の部分)にもさらに磨きをかけて下さい。法科大学院で身につけた知識・技術も、やがては「過去のもの」となり、そのあとは、皆さんが自分自身でアップデートし続けなければなりません。司法試験の合格は、まさに皆さんがこうした自己研鑽を開始する契機でもあるのです。

 皆さんは、合格された「鍵」は何であるとお考えでしょうか。その答えは十人十色だと思いますが、これからは、それらをぜひ後輩の方々にも伝えてあげて下さい。そして近い将来、皆さんに本法科大学院の教育に関わっていただける機会がありましたら、こんなに嬉しいことはありません。

 残念ながら今年度は不合格であった皆さんは、まずは冷静になって、何が合格に至らなかった要因であったのかを客観的に分析してください。本法科大学院でも、一昨年度から、修了生向けのサポートを一層充実させる取組みを始めていますので、そうした分析にも協力できることと思います。これらの取組みを活用して、来年度こそは見事に目的を達成されるよう、期待しております。

2021年9月7日

北海道大学法科大学院長  城下 裕二