国際シンポジウム「グローバリゼーション時代におけるローカルガバナンスの変容」

マイケル・キーティング●ヨーロッパ大学研究所教授
ステファノ・バルトリーニ●ヨーロッパ大学研究所教授
トマス・ヒューグリン●ウィルフレッド・ローリエ大学教授
ほか

●主催:高等法政教育研究センター
●共催:北大大学院法学研究科、グローバリゼーション研究会
●後援:日本学術振興会、日本政策投資銀行、日本経済研究所

 

報告

 本シンポジウムは、グローバリゼーションが国民国家・中央地方関係・地方自治に与える影響と、地方におけるガバナンスの変容を国際比較の観点から考察することを目的に開催された。

 第一日目は、中村睦男北大総長のあいさつの後、山口二郎教授(北海道大学)と成田一憲氏(北海道総合企画部政策室構造改革推進課長)による基調講演が行われ、北海道においてグローバリゼーションおよび地方ガバナンスのあり方を論じることの今日的意義と課題についての問題提起が行われた。理論面からの考察として、ステファノ・バルトリーニ教授(ヨーロッパ大学)が、グローバリゼーションが国民国家の枠組と中央地方関係をどのように変容させているのかを論じた。また、トマス・ヒューグリン教授(ウィルフレッド・ローリエ大学)は、国民国家が確立する以前の政治理論を検証するためにJ・アルトジウスの重層的政体理論とその今日的意義について考察した。遠藤乾助教授(北海道大学)は、ヨーロッパ連合の構成原理である補完性の理念を西欧政治思想史の文脈の中で検討するとともに、地方分権との関連について論じた。また、現実面における変化の検討として、宮脇淳教授(北海道大学)が、グローバリゼーションが財政投融資制度改革を中心とした日本の地方財政システムに与える影響について、城山英明助教授(東京大学)が、WTOによる政府調達ルールの地方政府への適用過程における中央地方関係を日米比較の観点から考察した。

 第二日目は、地方ガバナンスの変容を国際比較の観点から検討することを目的に、各国の動向とその背景に関する報告が行われた。マイケル・キーティング教授(ヨーロッパ大学)は、ヨーロッパ諸国においてリージョンを単位とした分権化が進行している歴史的過程とその背景を、包括的に論じた。梁承斗教授(延世大学)は、韓国の地方自治制度の特徴、近年における地方分権改革とその成果、自治体における独自政策の展開についての報告を行った。蔡秀卿助教授(淡江大学)は、台湾の地方自治制度の特徴、台湾省を中心とした地方自治制度改革、電子化政府構想・行政情報化の動向について論じた。日本に関しては、新川達郎教授(同志社大学)が地方分権改革の意義と残された課題についての考察を、佐藤克廣教授(北海学園大学)は日本の地方自治制度の特質を国際比較の観点から論じた。また、島袋純助教授(琉球大学)は、90年代における沖縄県政と中央政府との関係を、グローバリゼーションへの対応という観点から論じ、山崎幹根助教授(北海道大学)は、北海道におけるグローバリゼーションへの対応の欠如を、北海道開発体制を中心に検討した。

 なお、上述した報告者のほか、小川有美助教授(千葉大学)、津田由美子助教授(姫路獨協大学)、神原勝教授(北海道大学)、辻康夫助教授(北海道大学)が討論者として、中村研一教授(北海道大学)が司会者として参加している。

 本シンポジウムでの2日間にわたる討論を通じて、多岐にわたる論点が深められ、国内外から参加された研究者間の幅広い交流も実現した。本シンポジウムの成果は、今後もこうした国際的な学術交流を促進させる企画を発展、継続させる意義を再認識させるものであった。なお、今回のシンポジウム開催に際しては、日本学術振興会および日本政策投資銀行・日本経済研究所の後援を受けている。記して厚く感謝の意を表する次第である。