第四回「旧植民地関係史料をめぐるワークショップ 朝鮮・満州・中国・台湾」~北海道大学ラウンド~

第四回「旧植民地関係史料をめぐるワークショップ朝鮮・満州・中国・台湾」

~北海道大学ラウンド~(日中歴史研究センター助成)

旧高等商業、高等農林、帝国大学などの大学には、現在も数多くの貴重な東アジア関係史料が残されています。これらの史料は、とても注目されつつも、ひとつの岐路に立たされているといえます。それは第一に、内外の学界で「帝国日本」への関心、中でも「知的蓄積」への関心が高まる中で、あらためて日本国内のこうした史料へのアクセスが求められていることがあるが、他方で第二に、独立行政法人化などの影響の中、これらの史料の置かれる状況がたいへん厳しいものになってきているということなど、管理面における問題が生じていることである。

こうした問題を、管理者である図書館・図書室司書と、利用者である研究者がともに議論する場が、2001年以来形成されはじめてきている。2001年会議は大分大学、2002年は滋賀大学、2003年は山口大学と、いずれも旧高等商業高等系統で開催され、数多くの参加者を得てきた。本年度は、北海道大学で開催することとした。
本年は、中国などからゲストを迎え、国内の状況に加えて、東アジアにおける日本語図書資料の置かれている状況などについてもあわせて議論できればと考えている。
(井村哲郎、川島 真)
 
日  時: 9月18日(土) ~ 19日(日)
場  所: 北海道大学法学研究科センター会議室(315右)

主催: 東アジア日本語図書資料研究会
共催: 北海道大学法学部高等法政教育研究センター

◆報告予定者: 井村哲郎

プログラム

9月18日(土)
午前中
総合図書館書庫など自由見学
13:30~
総合図書館見学会
15:30~17:30
会議
18:30
懇親会(於 すすきの)
9月19日(日) 
9:00~14:00
会議
(農学部図書館など見学ご希望の方は月曜日にご案内いたします)

 

報告予定者(8月6日現在、敬称略)

 平井孝典● 小樽商科大学百年史編纂室
 江竜美子● 滋賀大学経済経営研究所
 井村哲郎● 滋賀大学
 金丸裕一● 立命館大学
 川島 真● 北海道大学
 
★ 報告については、各自15分程度。参加される方は何かしらお話いただければと思います。なお、経費については図書館司書の方を優先しますが、補助をさせていただきますのでご相談ください。
★ 参加希望者は、井村哲郎(imurat@human.niigata-u.ac.jp)、江竜美子(eryu@biwako.shiga-u.ac.jp)、川島真(shin@juris.hokudai.ac.jp)までお知らせください。宿泊などにつき、ご不明な点がございましたら、川島までご相談ください。

《参考資料》

日中友好会館 日中歴史研究センターへの助成申請の際の「作文」
(本プロジェクトは当該センターからの研究助成を受けています)
〈近代中国関連図書資料の「再発見」―図書資料から見た「帝国」と日中関係〉

●趣旨

(1) 日本国内の資料状況の再点検の必要性―岐路にたつ資料群―
旧帝国大学、旧高等商業・高等農林学校などには、多くの近代中国、「偽満」、台湾、朝鮮半島関連の日本語・中国語図書が残されている。これらの大学が、戦前期、日本の植民地経営、中国への侵略を含めた「帝国」を形成するための研究・人材養成の拠点であったからである。しかし、これらの資料は、現在、岐路に立たされている。第一に、これらの資料についてはアジア経済研究所などが目録を作成したが依然十分なものはなく、所蔵状況が利用者に十分把握できない状況にあり、第二に独立行政法人化、大学間合併などの下で所蔵それじたいが危機の中にある。その重要性に比して社会から十分な認知を受けていないことが一つの背景であるが、今後に向けて特に重要なのは、こうした問題を内外の研究者と図書館職員が共有し、ともに問題のあり方、解決の方法、そして史料価値について議論を深めていくことである。

(2) 日中間の史料の共有―日本側からの情報発信は十分か?―
日中関係史を論じる際に史料がひとつの基盤となることは言うまでもない。80年代末以降、中国で急速に文書(档案)や図書が公開され、日本でもアジア歴史資料センターのウェブ上での文書公開など、研究環境は一変しつつある。しかし、日本側の研究者が中国の各地の档案館や図書館に史料を求めて行くのに対して、逆に日本側から日本国内の史料の状況や価値を中国側に対して発信しているのかという点については十分ではない。これは日中間の学術情報の交流という面でバランスを欠いた大きな問題である。こうした問題は、大学図書館の所蔵図書資料に顕著である。この点について、中国における図書や資料のネットワーキング、情報発信などについての中国側からの紹介を得ながら、意見交換をしたい。

(3) 近代東アジアのブックロード
資料の重要性、位置づけを考察する際に、近代東アジアにおける図書や学術情報の還流という広い視野の中で考え、各大学や研究機関の所蔵図書の特徴を把握していくことが求められる。この点についても、内外の研究者でともに議論を深めていく。

(4) 日中間の戦前期図書の整理・保存に関する技術協力
中国においても戦前期の日本語図書が東北部や北京、上海の図書館に所蔵され、その整理、保存は大きな課題である。これについても情報交換をする場を提供したい。

●準備状況

本研究会は、これまで大分大学(2001年度)、滋賀大学(2002年度)、山口大学(2003年度)など旧高等商業系大学で研究者・図書館司書共同の会議を重ね、問題意識の共有、情報交換、各蔵書の性格に関する議論を重ね、すでに論文集「彦根高等商業学校収集資料のポリティクス」(『彦根論叢』344・345号、2003年11月、205-437頁)などとして成果を公刊している。今回は視野を東アジアに広げ、図書資料のあり方、整理手法、情報発信方法、史料価値について検討する。

●成果の公刊

成果についてはこれまでの議論を含め、学術雑誌の特集などで公刊する予定。

●主催者

東アジア日本語図書資料研究会

●主催者の主なメンバー

代表:井村哲郎(新潟大学)
幹事:金丸裕一(立命館大学)、阿部安成(滋賀大学)
会場校担当者:川島真(北海道大学)

●同時通訳の有無

ウィスパリングによる通訳を必要とする