法理論研究会定例研究会「社会的世界はいかに把握されうるか? —エスノメソドロジーの失われた原問題をめぐって」

20160323ポスター ポスター(PDF)

  • 時間:14時~
  • 場所:北海道大学法学部センター会議室(315室)

  • 【報告者】
     樫村志郎氏(神戸大学)
  • 【テーマ】
     「社会的世界はいかに把握されうるか?
     —エスノメソドロジーの失われた原問題をめぐって

【要 旨】
Harold Garfinkel (1917-2011)が創始したエスノメソドロジー(ethnomethodology)への理解は、長い間、Garfinkel (1967)以後のテキストを理解することを中心に行われてきた。近年、これに対して、Garfinkel の初期の著作の公刊などにより、エスノメソドロジーの構想には、その学界的影響の開始(1960年代末から70年代)のかなり以前に起源があることが強く示唆されるようになった(Rawls 2013)。ここから、孤立した学派としてとらえられがちであったエスノメソドロジーを、20世紀前半におけるアメリカの主観主義社会学の主要な理論的=方法論的問題であった社会的世界はいかに把握されうるか(それは社会の理解方法と社会的データの主観性の取り扱いの方法という方法論問題を中心とする)への解答の試みの延長上に位置付けることが可能にされるが、それとともに、今日の主観主義社会学の方法論の再考を促す可能性も展望することができる。そのような意図から、私は最近の研究(樫村 2015, 2016)で、伝記的事実に基づきつつ、1940年代におけるGarfinkel の研究(Garfinkel (2006[1948], 1949, 1952)が、Husserl 現象学に加え、同時代のいくつかの社会学研究(Thomas & Znaniecki ととりわけZnaniecki の社会学, Kenneth Burke のドラマティズム)の影響の延長上で考えられるという解釈を提示した。本報告では、Garfinkel の Harvard 大学院時代(1940年代後半から1950年代)からUCLA時代(ここではほぼ1954年から Garfinkel (1967)刊行まで)における、社会現象学(Aron Gurwitsch と Alfred Schutz の現象学)とTalcott Parsons の社会学理論のGarfinkelへの影響について考察を行う。 Garfinkel の伝記的事実と同時代の関連する著作群については、著者が、Website(樫村 2012-2016) を公開しているのでご参照を願う。

    Cited Sources:
  • Garfinkel, Harold 1949 "Research Note on Inter- and Intra-Racial homicide." Social Forces, vol. 27:370-381.
  • Garfinkel, Harold 1952 The Perception of the Other: A Study in Social Order. (Ph.D. Dissertation, Ph.D. in Sociology, June 1952.)
  • Garfinkel, Harold 1967 Studies in Ethnomethodology. Prentice-Hall.
  • Garfinkel, Harold 2006[1948] Seeing Sociologically: Routine Grounds of Social Action. Edited by Anne Warfield Rawls. Paradigm Publishers.
  • Rawls, Anne Warfield 2013 “The early years, 1939–1953: Garfinkel at North Carolina, Harvard and Princetonn,” Journal of Classical Sociology Vol. 13(2),pp. 303-312.
  • Thomas, William I. & Florian Znaniecki, 1918-20 The Polish Peasant in Europe and America: Monograph of an Immigrant Group. (First edition) (https://archive.org/details/cu31924082469507)
  • Znaniecki, Florian 1936 Social Actions.Farrar & Rinehart.
  • 樫村 志郎 2015 「法社会学の対象と理論—エスノメソドロジーの社会学的形成の観点から—」『法と社会研究』第1号.pp.3-29.
  • 樫村 志郎 2016 「アカウントの社会学的解釈—Florian Znaniecki の社会学方法論を手掛かりにして—」西田英一・山本顯治編『振る舞いとしての法—知と臨床の法社会学—』法律文化社, pp.3-25.
  • 樫村 志郎 2012-2016 Website: Formative Steps of Ethnomethodology. https://sites.google.com/site/shirokashimura/Home/formative-works-of-ethnomethodology.

主催:北海道大学法理論研究会、北海道大学法学研究科附属高等法政教育研究センター