司法試験合格発表に際して法科大学院長からのメッセージ

 今年度の司法試験に合格した皆さん、おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

 皆さんは、いよいよ法曹としての道を歩みだすことになります。これまでは司法試験に合格することが重要な短期的な目標でしたので、どうしても「答案」をどのように書けばよいのか考えることが、皆さんの頭のなかの大きな部分を占めてきたと思います。しかし、これから皆さんが向かい合っていく法律問題は、教育的に配慮された「出題意図」があるものではありませんし、定められた試験時間内に答案を書けるように用意されたものでもありません。これまで見たこともない事案、予想もしなかった新しい難問に直面することがでてくると思います。法科大学院で身につけた基礎知識とスキルを土台に、法情報を十分に調査し、社会正義の実現に貢献できる、創造力のある法的解決をできる法曹になっていっていただきたいと祈念しております。

 また、これは皆さんへのお願いですが、皆さんの司法試験受験にあたっての経験をぜひ後輩の方々にも伝えてあげて下さい。彼らにとって貴重な財産になると思います。そして近い将来、皆さんに本法科大学院の教育に関わっていただける機会がありましたら、こんなに嬉しいことはありません。

 最後に、残念ながら今年度は不合格であった皆さんは、まずは気持ちを落ち着けて、合格に至らなかった要因は何であったのかを冷静に客観的に分析してください。本法科大学院では、修了生向けのサポートを行っていますので、そうした分析にも協力できることと思いますし、皆さんの力になりたいと考えています。来年度こそは見事に目的を達成されるよう、期待しております。

2022年9月6日

北海道大学法科大学院長 曽野裕夫