公開シンポジウム「地方行政から地域経営へ--新たな時代の地域づくり--」

ガバナンスシンポジウム・シリーズ
「自治体改革の検証」Part2

「地方行政から地域経営へ」―新たな時代の地域づくりー

衆議院議員として国政に9年間携わった後、今年4月に横浜市長に就任。
中田宏市長は、「民」の力を信じて応援し、その活力を高めることが政治や行政の役割だ-との
考えにたって、「市民の力を生かす仕組みづくり」に取り組んでいます。
非「成長・拡大」の時代を迎え、閉塞感の漂う今、
横浜から日本を変えようとする若き首長の都市経営プランを、市長自ら語っていただきます。

【第1部】 基調講演 中田 宏●横浜市長

テーマ
「民の力が存分に発揮される都市・横浜の実現を目指して」

【第2部】 質疑応答

コメンテーター/宮脇淳●北海道大学教授
司会/山口二郎●高等研センター長

日  時: 2002年12月7日(土)14:30~17:30(開場14:00)
会  場: 北海道大学学術交流会館講堂
       札幌市北区北8条西5丁目(北大正門横)
問合せ: 北海道大学法学部   電話 011-706-3119

●主催:高等法政教育研究センター ●共催:日本政策投資銀行・日本経済研究所

※入場無料、参加ご希望の方は直接会場へお越し下さい。
※自家用車は構内に乗り入れできませんのでご了承下さい。

 

報告

 12月7日、2002年春に最年少で政令指定都市の市長となった中田宏氏を招聘し、政令指定都市の地域経営と政策展開を柱に議論を展開した。

 冒頭、中田市長から就任後半年間の取り組みについて紹介があった。第一は、日本で最も規模の大きい政令指定都市として区への分権が不可欠であり、その実践のためには区長人事の改革、区への予算編成権の充実などを実現する必要があること、市と区のあり方について抜本的に見直す必要があること、第二は、NPOを含めた民間とのパートナーシップの実現が不可欠であること、第三に、情報共有がパートナーシップを実現する前提であり、市長交際費等も含めた市財政の透明化が市民との信頼性確保に大きく貢献していること、第四に、小学校の校庭の芝生化政策、公共交通機関で実施されている高齢者無料パス制度の見直しなど具体的な事例を通じて、公共サービスと行政サービスは異なることを市民とも共有し、市民にも公共サービスの提供者となってもらうと同時に、必要な負担が不可欠であることの認識を共有していくこと、第五に、以上の点を踏まえれば、市長は行政機関のトップであるものの、より強く政治家であることを認識する必要があること、などが中田氏から指摘された。

 以上の指摘に対してシンポの参加者等から、議会との関係について如何に考えているか、議会での質疑・答弁について北海道議会で展開されている事前協議的な手法をどう考えるか、情報公開の充実は必要な点であるが情報公開に伴って生じてくる過去の行政責任の問題について如何に対応する考えか、NPO等の活用について具体的に如何なる工夫を展開しているか、住民基本台帳のネットワーク化に対する考え方、札幌市の政策や今後の方向性などについての質問、問題提起が行われた。

 中田氏からは、政策議論を展開する議会への変革を政治家として努力するべきであること、横浜市全域を対象として展開すべきセーフティネットの事業は減少しており、区の単位で自主的に政策が展開できる制度設計が必要なこと、区で自主的に政策を展開する際に現在の横浜市議会の区に対する実質的な意思決定の分権を実現する工夫が必要なことなどの指摘があった。

(宮脇 淳)

感想

●民の力に依拠した自治体の改革をトップの方から具体的にお聴きする機会に恵まれ、非常に新鮮な感じを受けると同時に、住民の自覚を行動に移す上でのイメージがはっきりしてきた。大変すぐれた企画でもあり、大学の先生がこのようなとところに焦点を当てられたことを大層心強く思いました。自治体の職員側の考え方、行動に関する問題も取り上げられると、さらに改革の筋道が(問題点が)明確になるのではないでしょうか。(苫小牧市・公務員)

●市長の役割、政治のすべきこと等、大変有意義でした。政治と行政の役割、市民の役割をきちんと考える大切さを認識できました。素晴らしい市長を持った横浜市民をウラヤマしく思いました。(江別市・無職)

●道、市首長の選出に十分参考にしたい。首長に足る識見、資質、人格がきわめて重要なる事を再認識した。(札幌市・社団役員)

●「新しい公共性」についての議論は最近注目されるが、中田市長のご主張の中に、その処方箋が具体的に示されていると思った。社会全体をとらえた上での仕組みづくり、機能を現実に動かすことのできる具体策。それが拝聴できただけでも貴重な刺激でした。勿論もっと得たものは大きいですが、書ききれません(笑)。(札幌市・大学生)

●政治ってむずかしいですね。大変おもしろくきかせていただきました。中田市長の手法というのはいわゆる社会人が仕事をする上でのやり方に似ているなとわかりました。(札幌市・大学院生)

●非常によかった。札幌市の協働型社会のウソがよくわかった。(札幌市・記者)

●仕組みづくりのベースが理解できた。また、組織がどう自然に動いていくかが理解できた。(札幌市、会社員)

●大変有意義な3時間でした。中田市長の新しい発想による自治体経営、市民の参加と責任に関するお話には大いに共感しました。(札幌市)

●とても参考になった。当市でも今後の活動に生かすべく考えています。戻って皆に伝えたい。(登別市)

●行政改革が望まれる今日において、横浜市長の話はとても明るい展望が持てました。(札幌市・会社員)

●中田市長は若いにもかかわらず、すばらしい人である。今後も自分の信念実現のためにがんばって下さい。(江別市・会社員)