連続シンポジウム「どこへいく日本の民主主義Part 3」 「政権交代は可能か」

菅直人●衆議院議員

主催:高等法政教育研究センター

センター長あいさつ

山口二郎センター長あいさつ

寒い中ようこそおいでくださいました。
 当北海道大学法学研究科附属高等法政教育研究センターが送る連続シンポジウム「どこへいく、日本の民主主義PART3」、今日は大変寒い中、東京から菅直人さんにおいで頂きまして、これから政権交代への展望をじっくりとお聞きしたいと思います。

 菅さんについては私がくどくどとご紹介するまでもない、現在民主党幹事長衆議院議員であります。今日は本当にお忙しい中時間をやりくりしていただきましておいでいただきました。

 今日のこの会なんですけれども、第1部で菅さんにご講演を頂きまして第2部では私と菅さんが対談をしてお話を深めてまいりたいと思います。間の休憩はありませんので若干1部と2部の間で時間が空くのですけれども続けて行います。
 それから携帯電話などの電源を切っていただくということと一般の方の写真撮影はご遠慮いただくということをあらかじめご了解いただきたいと思います。

 それでは早速菅さんにお話を頂きたいと思います。お願いします。

 

第1部 講演 「政権交代は可能か?」

菅 直人  氏 (民主党幹事長 衆議院議員) ●

皆さんこんばんは。菅直人でございます。
 北海道にはいろんな機会にかなり古くからよく来てはいるんですけれども、この北海道大学の中でこういう話をするのは私にとっては初めてでありまして、多少緊張いたしております。よく大学祭などでいろんな大学には行くんですけれども、今日は学生さんばかりではなくていろんな方がおいでのようなのでどんな話をしようかな、と考えながらやってきたところであります。40分くらい最初に話をしようということですので、少し雑談めいた話になるかもしれませんが、お聞きいただきたいと思います。

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ヨーロッパの政治状況-「民主主義の民主化」と「上への分権」

 実は去年の12月の10日から10日間ほどイギリスとイタリアそれにEU関係でブリュッセルにちょっと行ってまいりました。イギリスは言うまでもなく今はブレア政権でありまして、第三の道という言い方をいたしております。

 行くに当たって少しいろんな本を読んだり、あるいは帰ってからも少し読んでみたりいたしました。いろんな面白い言葉がありました。

 ひとつはですね、「民主主義の民主化」という言葉ですね。どういうことなのかなと思ってましたら、例えばかつての東側に対して民主主義が必要だとか封建制に対して民主主義が必要だという、ここは非常にはっきりするんですが、逆に民主主義がかなり定着しているといわれるイギリスとかフランスとかあるいはアメリカとか場合によっては日本とかですね、そういうところで逆に民主主義といいながらどうも国民から今の政治が遊離をしている。そこでもっと権力を有権者に、国民に近いところにもっともっと移そうじゃないか。イギリスではスコットランドで新しい議会を作ったりですね、あるいはロンドンという市はある時期から市長さんがいなかったわけですけれども、直轄的にやってたわけですが、その市長さんをもう一回復活させたり、ある意味で分権といいましょうかそういうことをやっておりました。

 もうひとつの言葉で面白かったのはですね、「下への分権」に対して「上への分権」ということですね。つまり地方自治体に国の権限をどんどん移していくのに加えて、国の権限・主権をヨーロッパなんかEUにですね、主にEUですがどんどん移していく。私が出かける直前にニースでEUの会議がありまして新しいEUの決定方式が、今入っている国だけではなくて将来ポーランドとか新しい国が入った場合にもどういう風に意思決定をするのかというルール作りがだいぶ難航しましたが合意をされていたり、あるいはEUが共通の緊急展開軍、つまりコソボなどでですね、ヨーロッパの中の出来事でありながらNATOつまりアメリカの主導権に依存しなければ何もできなかったという反省からEU自身もそういうことに対してある程度の展開軍を持とうじゃないかということで、6万から8万の緊急展開軍を持つことが決まっている。あるいはユーロもいよいよ来年から具体的な通貨として流通しはじめるわけですが、久しぶりにヨーロッパに行って見ましたら、タックスフリーなんですね。ロンドンで買おうが、ローマで買おうが、国と国の間ではまったくチェックがなくて、EU全体から外へ出る時にチェックがあるという形であり、そういう点で国家主権というものをかなりEUに移譲しつつある。これもひとつの私にとっては予想を越えたEUというものが進化してきているんだなと、こんなことを思ったところであります。

イギリスとイタリアの再生

 20年ぐらい前までは斜陽国といえばイギリスといわれたわけですが、今や夜明けのムードでありまして、21世紀にイギリスは新しいモデルを世界のモデルになるんだと、このブレア首相のアピールが実際にいろんな意味で活力を生んでいる、とこんなものを見てまいりました。

イタリア、これは実はオリーブの木というやり方を5年前にとってプロディさんが首相になって、その後いろんな展開がありましたけれどもここも今年イギリスもそうですがイタリアも5月に選挙がありまして、現在のところ次の選挙ではローマの市長のロテッリという人とテレビ局を3局ぐらい持っているベルルスコーニという人がそれぞれのグループの中道左派連合と中道右派連合のグループの総理大臣候補になって、そしてそれぞれのいくつかの政党が選挙協力をして、その中に一人ずつ候補者を立ててどっちが勝つか勝ったほうが総理大臣になるという、その2度目のオリーブ的やり方を今着々と準備が進んでおりました。このイタリアもかつてはGDPの120%を越える借金があって、もっともヨーロッパでも劣等生といわれていたわけですが、今じわじわとその借金が減りつつある。その5年間の間にわが国は今やGDPの130%近くまで借金が増えてしまっているということでありまして、今や日本がイタリアを逆にお手本にしなければいけない。イギリスをお手本にしなければいけない。そんな実態を少し見てまいりました。

日本の行き詰まりの原因はバブルの処理の失敗

 そこでこういう日本の行き詰まりというものがどこから生まれたのか、このことをある程度分析しておかないと例え民主党が政権を握っても何をやったら今の状況を打開できるのか、ということにつながらないわけですから、そういう国々を見ながらですね、あるいは日本のこれまでのあり方を見ながら私なりに今の日本の行き詰まりの原因がどこにあるのかということを2、3申し上げてみたいと思います。

 経済的にはですね、やっぱり何といっても1985年から急激に生じたバブル、そして1990年ごろからそれが破裂し、そしてその後のバブルの処理の失敗、これが何といっても大変大きかったと思っております。

 私は土地問題に昔から大変興味がありまして当時からいろいろ調べておりました。1985年の日本の地価総額、土地の値段の総額が大体1千兆円と経済企画庁が発表してました。わずか5年後の1990年その1千兆円が2千400兆円まで2.4倍までふくらみました。そしてその後それが今1千兆ちょっとぐらいまで下がっているわけです。大雑把に言えば1千兆上がって1千兆値下がりしてるんですね。その間に何もしなかった人が良かったわけです。北海道の大学の北大の敷地なんか誰も売ったり買ったりしないから、誰ももうけも損もしなかったわけですが、お金を借りて土地を買った人は大変なことになった。

 みなさん千昌夫の二つの原則というのを知っていますか。当然知らないでしょう、私が勝手に言ってるんですからね(笑)。つまり土地の値段が金利よりも高い勢いで値上がりするという一つの原則と、持っている土地についてめいっぱい銀行がお金を貸してくれるというこの二つのことがあればどうなるか。

 千昌夫さんは最初歌でちょっぴり稼いで土地を買ったわけです。その土地をまた担保にしてお金を借りて土地を買ったわけです。そうするとある時気がついてみたら2千億円の借金があるんだけども3千億円の土地を持ってたんですね。ですから3千億円の土地があって2千億円の借金ですから1千億円の大金持ちになったわけです。その二つの原則があるとそうなんですよ。それでどういうことが起きたか。1990年、91年でしたか、時の大蔵大臣橋本龍太郎さんがですね、ある日総量規制というのをかけたわけです。つまりこれ以上土地で金を貸すことを増やさないとこういうことであります。そうするとその二つの原則の一つが狂っちゃうわけですね。どういうことになるか、千さん2千億の金利払わなければいけないんだよと。金利?そんなの銀行から借りてくればいいじゃないまだ3千億あるじゃない。いや銀行がもうこれ以上は土地では貸しちゃいけないということになったというではないですか。じゃあまだ3千億土地があるんだから一部売って金利払えばいいじゃない。いや売ろうと思っても全部に対して総量規制がかかっているから誰も買ってくれない。それで千昌夫さんは翌日目がさめてみたら3千億の土地と2千億の借金の2千億の借金はそのままだったんですが、3千億の土地が、気がついてみたら1千億しかなかったんですね。そして1千億の大借金王になったわけです。

 実はこれにはもうひとつ話がありまして、その3千億円分の土地がゴルフ場のあるいはホテルでもリゾートでもいいから毎月毎月収入が上がっていればその収入で金利ぐらい払えたんですが、一生懸命ゴルフ場作りかけたりハワイのリゾートを作りかけたりしても全然収益を生まない。つまりは値上がりだけをいわば担保にしてやっていましたから、そういう意味では金利が払えなくて今や毎日歌を歌ってもなかなか金利分も払いきれないという大借金王になられたわけです。そういう構造が日本中にあるわけですね。ですからどう少なく見ても100兆あるいはもっと大きな不良債権がその1990年前後に銀行を中心に生じた。そこでその処理を急ぐべきだったわけですが、残念ながらその処理ができておりません。

不良債権処理の失敗と官僚管理型経済

 3年前に実はですね、金融再生法という法案を民主党が出しまして、当時の小渕さんが丸飲みをして成立をいたしました。これがもうちょっと早くできていたら北海道拓殖銀行も国有化によって長銀や日債銀のような処理になったのかもしれないのですが、我々が作ったときにはもう北拓(北海道拓殖銀行)だけはもう処理されてしまっていたんです。けれどもどういう法律かと簡単に言えば、つぶれそうになった大きな銀行はバンとつぶすと日本中が取り付け騒ぎが起こる、世界がおかしくなるから一時国有化してしまおう、手術で言えば大きなガンの手術をしたいけども普通の手術をしたら手術をしている間に死んじゃいそうだから立派な手術室で人工心臓もある、人口肺もある、少々心臓が止まったってその間生きていけるようなそういう手術室を法律できちんと作ったわけであります。

 そこで小渕さんを始め宮沢さんたちがちゃんとその法律を使って3年前ごろからちゃんとやってれば少なくとも今ごろはそろそろ明るい日差しが見えたのではないかと。しかし実際は何をやったかといえば、ガンはこんな大きいんですけどもガンを全部切るとですね、ガンというのは不良債権ですから実はこの不良債権は「何とか組」というあのゼネコンに貸した金なんだ、あのゼネコンに貸した金が返ってこないというふうに認定したらそのゼネコンがあっという間に信用崩壊してつぶれちゃう。これは何とかというスーパーに貸した金なんだ。これが不良債権ということになるとそのスーパーもつぶれちゃう。だからいっぺんに切り取るわけにいかないから半分だけ切り取っておこう、というようなことをやったわけです。そして半分残ったガンを持ったままですね、長銀や日債銀を外国系のいろんなところに売ろうとするもんですから、ガンが残っているのをお互い知っているもんだから、そこで損が出たときはもう一回お金を国が出しますという「瑕疵(かし)担保責任」というわけのわからない制度を入れて売っているわけであります。

 こういうやり方ですから全然不良債権の処理が10年経っても残念ながら終わっておりません。そこで今から何年前でしょうか。1995年のころでしたか私は「さきがけ」にいた時に武村代表が大蔵大臣でなりまして、「武村さん、不良債権は大蔵省が言っているように20兆や30兆じゃありませんよ」ということを言いに行った事があります。そしたら時の大蔵大臣がですね、「菅さんそんなことを言うけど家の銀行局長はそんなこと言ってないよ、連れてこようか・・・」。

 西村さんというですね銀行局長がやってまいりまして、私と若い代議士と二人で行ったんです。「いったい誰がそんなこと言っているんですか。もうあと2、30兆しか不良債権がないんだから毎年金利が非常に安いために業務純益がものすごく黒字ですから、業務純益が、あと2、3年もしたらきれいになりますよ」というから、そんな簡単な話じゃないだろうといって笑わされて終わったわけです。
 先だってその元銀行局長にあるところで会いまして、今何をやっているんですかといったら早稲田大学で金融を教えています、と。あそうですか、といったらひとこと、東南アジアからたくさん留学生が来て金融行政の失敗について教えていますと言われましたから、それ以上追求するのはもうやめましたけれども、これは実話です(笑)。

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 つまり私は日本のこういう失敗はですねひとつは成功したやりかたが通用しなくなった、日本の経済の多くはですね官僚管理型の経済だったわけです。戦後50年間の内の未だにと言ってもいいかもしれません。つまりは政治管理型というよりは官僚管理型といったほうがストレートだと思います。
 私が生まれたのは山口県の宇部という瀬戸内海の町ですけども、早く工場用地のためにどんどん埋め立てをしなさい、埋め立てをした所の土地の固定資産税は安くしますからとかですね、そういうことをいろんな役所が指導する。それにのっていろんなことをやっているとだんだん日本の経済がですね、復興から高度成長に至った。

 銀行なんていうのは実は日本には民間銀行がいくつあったか、実はひとつもなかったんですね、実際は。銀行というのは本店が大蔵省の銀行局であとは三菱銀行も何とか銀行も全部支店みたいなものでですね、「モフタン(MOF担)」なんて言葉を知っている方はおられるかもしれません。「モフタン」というのは大蔵省のキャリアのお役人にくっついていろいろゴルフの接待したりなんかする銀行の担当者のことを言っていたわけです。その担当者も、お前同窓生だからと言って東大とか何とか大とかを出たのがくっついて、常に大蔵省銀行局が本店で本店の決済がない限り支店は新しい商品ひとつ出すことができない、そういう形がずっと続いているわけです。

 よく「大きい政府」、「小さい政府」という言い方があって、自民党は小さい政府なんて大嘘を言っていますよね。自民党ほど大きい政府はない。つまりは公共事業というのは経済の相当部分を政治によってコントロールする、官僚がコントロールするわけですから、つまりは大きい政府であるわけです。私はだから自由民主党というのは国家管理型社会主義政党ではないかと本当のところ思っているんですね、経済の面では。
 そのやり方が確かに発展途上的段階では非常に成功した。一種の計画経済ですからね。
 しかしそれがまさにビッグバンを含めたグローバルな社会になっていろんなものがもう中心で銀行局が考えるんじゃなくてそれぞれの会社が考える、それぞれのところで考えたほうが効率もあるいはスピードも良くなった段階でも、そのやり方を続けていた。

 そのために、1989年ごろ世界で20の大きな銀行の中でつまり優良な銀行の中で日本の銀行が15行ぐらい入っていました。ところが今20行並べたら1行入るかどうかというところまできています。そういうわずか10年間でそれだけの大きな失敗の蓄積になってしまったわけです。そういう意味で私はもちろん官僚管理型の経済をやめたら全て良くなるという風にストレートに言うつもりはありませんが、少なくとも官僚管理型の経済では今の時代の変化についていけないというですね、そのことだけは明らかだ。ですから本来なら自由民主党が10年ぐらい前にサッチャー改革とかですね、レーガン改革のようなことをやって、そのやりすぎたところを民主党がブレア流にやれればちょうどヨーロッパと同じようなスピードになったのですが、残念ながら国鉄を除けばほとんど改革らしい改革を自由民主党政権はやってこなかった。それどころか未だに株が下がったらどうやって国の金で株価を維持しようかなんて馬鹿なことを考えていますから、ますます官僚政治コントロール型の経済になって、ますます深みにはまっている。ですからそういう意味で私はまずそこを変えなければいけないと思っているわけです。

三権分立と国民・国会の行政に対するコントロール

 そこで少し行政の話をしてみたいと思います。ここは法学部ですからあえて挑戦的に言いますと、時々司法試験なんか受ける人に言うんです。あなた私の憲法の議論を聞くと司法試験に通らなくなるからあまり聞かない方がいいよとまず言ってから話をするんです。

 三権分立という言葉があります。三権分立という言葉は、中学時代に私も習ったものですから当然のことだと思っているわけですが、私の憲法的な考えによればあれは大間違いの大嘘ですね。つまり日本国憲法は三権分立になってない、というかそういうことを予定していません。

 私が議員になったときに、まずお役所に来ていろいろ言うと、「いや菅先生国会議員は立法府の人ですから、行政府についてあまり突っ込んだ話をするのは政治的な行政に対する介入になります」とこういうんですね。そういわれるとなんとなく「うーん、そうか」とこう思うでしょう。しかし憲法第65条にはなんと書いてあるか。「行政権は内閣に属する」と書いてあるんですね。「官僚」に属すると書いてない、「内閣」に属すると書いてある。

 内閣というのはどうやって構成するのか。それは国会で過半数多数を取った人が総理大臣になる。その総理大臣が大臣を任命する。つまり国会というのは立法府だと、いうのは嘘なんですね。国会は立法府でもあるけれども立法府である前にひとつ仕事があるんです。

 何があるか。それは総理大臣を選挙する人の集団ということです。この間のアメリカの選挙でですね、ゴアとブッシュが立ちましたが、選挙人というのがいましたね。つまり選挙人の役割を国会議員は国民からつまり国民に代わって総理大臣を選ぶ。

 では、総理大臣を選ぶのが立法か。立法じゃまったくありません。国会というのはまず憲法第41条に国権の最高機関と書いてありますが、私は司法試験を受けたことはありませんけども最高機関というのは政治的美称説であって実際はどっちが上とは言えないんだというけども大間違い。

 国会というのは主権者である国民を直接代表しているのは国会だけですから。その国会がまず総理大臣を選ぶ国民に代わって、そしてその総理大臣が大臣を選んでいるのだから国民主権が行政にも及んでいるであって、内閣というのは官僚ではなくて政治なんです。

 政と官なんていうと、行政は官僚、政治家は立法という分け方をしますが、それは大間違いでありまして、行政そのものも政治なんです。そこで最近与党の中でも事務次官会議を廃止しよういうことになりました。

 私も十何ヶ月か厚生大臣をやったときに週2回閣議というのがありました。そして当時は梶山(静六)官房長官がですね、閣議が始まりますと言うとそばにいる閣僚以外の3人だけが部屋に入ってきます。それは官房副長官と政務と事務の副長官と法制局長官ですが、その事務の副長官が当時は石原信雄さんだったと思いますが、その日の案件をずっと読んでるんですね。書類が大きなテーブルに回ってきます。そこにサインするんですね。ちょっと見ていると次にまた来るから間に合わない、それで一生懸命サインするわけです。隣へ渡していくわけですね。一生懸命サインしてやっと終わったと思ってさあゆっくり見ようかと思ったら、「これで閣議を終わります」(笑)。大体15分間、そのあと閣僚懇談会と称してもう15分くらいやって30分くらい。翌日の新聞を見ると建設省が変な法案を出すといっている、「おかしいじゃないか」と言うと、「昨日の閣議で決まったんですけど」とこうなるですね。自分の役所のことはさすがに事前に見ていますが、1日に40件も50件もそんなに出てくるわけですから、細かく他の役所の分まで見る暇なんてないんです、15分間ですからね。

 そうするとどうなっているんだこんなことで大丈夫なのかと思われるでしょう。つまりそこで閣議が行われる前の日に必ず事務次官会議となるんですね。全ての役所の事務次官が集まってこれは1時間か2時間行います。

 このルールは一人でも反対したら決定できないというルールなんです。それはなぜかというと、内閣が全員一致制になっているからと言うんですが、憲法のどこにもそんなことは書いていません。だって内閣全員一致制なんておかしいじゃないですか。総理大臣が、つまり言ってみればサッカーでいえば監督がフォワードはあいつがいい何とかはあいつがいいと集めてチームを作ったのが内閣であって、その人事権を持っている総理大臣が最終的に責任を持って決めればいい話なんです。それを多数決とか、全員一致制なんてありえっこない。しかしなぜ事務次官会議が全員一致制にそういう理屈をつけてやっているか。

 全員一致制というと皆さん良いと思うでしょう。大間違いなんですよ。全員一致制というと拒否権が発動できるんです。ですから例えば農林省に諫早湾の埋め立てなんてやめた方がいいからやっぱりこの予算を削ろうとか、こういう法律を作ってそういうものはもうやめるような法律を作ろうと言ったら農林省の事務次官がそれだけは困る、うちの役所にとってこれだけはどうしてもやらしてもらわなきゃ困るといって反対したら、どの役所が言ったって通らない。拒否権を持っているわけですね。これが日本の役所の縦割りを最終的に確固たる物にしている根源だと私は見ています。

 それで事務次官会議はどういう法律に基づいてどういう憲法の規定に基づいてやってるんだ、私が書いた『大臣』という岩波新書を読んでいただくとその議事録もありますが、ちょっとコマーシャルをしてしまいましたが(笑)、その話を厚生大臣が終わったあとの予算委員会でやったんですね。当時の大森法制局長官に、どういう法律的根拠なのかと聞いたら、法制局長官が立ち上がりまして、「事務次官会議というのは慣例で行われています」と、「ところで事務次官会議を通さないで直接閣議にかかった案件というのは戦後あるのか」と言ったら、「いやあります」と、なかったんじゃないかな、何があるんだったかなあと思ったら、それは「衆議院の解散についてです」(笑)。いくらなんでも衆議院の解散を事務次官会議でイエスかノーか決められたらかなわない。

 「いや法律とか予算案で事務次官会議を通さないで閣議に直接かかったものはあるか」と聞いたら、「戦後1件もありません」。じゃ出しちゃいけないのか。いや憲法的規定から言えば例え厚生大臣といえども自衛隊を解散せよと出すことができるというんですね。しまったな、終わってから勉強したので間に合わなかったんですが、今度もしなったらどの役所にもかかわらず法律を作ってこれで行こうじゃないかと出してみようかと思っています。

 つまり日本は先程三権分立と言いましたけども、行政という一番自主的な権力をもっているところを、実は国民が国会を通してコントロールする仕組みに憲法はできているんです。しかし、実質は内閣というものが、事実上官僚の手の上に95%くらい載せられていますから、そこでほとんどコントロールする権能が官僚に移っている。

司法に対する国民のコントロール

 実は2年程前にですね、中坊(公平)さんにこんな発言をして後で怒られたのですが、総理大臣候補になりませんかということを申し上げたことがあります。つまりはオリーブ的に中坊さんに野党連立の総理大臣候補になりませんかと言ったら中坊さんが、私は司法制度の改革にあとのエネルギーをむけたいと言われました。司法制度調査会というのが今できていますが、その委員になったのでそちらをやりたいというわけですね。

 司法制度の改革をやるとしたらそれは最高裁を変えるしかないじゃないですか。それじゃ最高裁の判事を任命する立場になればそのほうが早いじゃないですか。

 最高裁の判事は総理大臣が任命するわけですよね。つまり司法も国民主権がちゃんと動くように憲法ができてるんです。

 国会は立法で行政は内閣で、そして司法は最高裁というか裁判所で、といったら国民はどこにアプローチできるか、国会以外にアプローチしようがないじゃないのですかね。

 そうではない。あくまで国会を通して総理大臣も決まるし、その国会を通して決めた総理大臣が裁判所のトップを決めるわけですから、そこを通して国民主権というものが機能するようにできているのです。

 ですから私はやっぱりお役人が三権分立という時にはですね、必ず前に手をこうやって、これは俺たちにものを言わせないために洗脳しているんだなと、こういうことをいうものですからあまり司法試験には向かないようになっているわけであります。

政・官もたれ合い構造と内閣の強化

 そこで少しですね、行政の問題をもうちょっと申し上げて見ますと、実はこの国会から少しずつですがいくつかのことが変わりました。これは民主党もあるいは今でいう自由党も一部自民党も乗ったなかでこの数年間にいくつかの改革が行われています。

 副大臣制とかですね。政務官とか、あるいは政府委員制度の廃止とかということです。これは主にイギリス的イギリスの議会制度の運用を参考にして日本もそうしようじゃないかということなんです。

 日本では与党の自民党の幹事長古賀誠さん、政調会長のうるさいのにどういうわけか「しずか」という名前の亀井静香さんですね。こういう人がいつも新聞をにぎわす。内閣が例えば公共事業の見直しというときにですよ、建設大臣の扇(千景)さんが言う、農林大臣の誰々が言うのならわかるけども、与党が言うわけですよ。さっき言ったように内閣は官僚が握ってて、じゃ与党自民党はどうするかというと与党の政調会とか幹事長とか言うコストで内閣をいわばけん制するわけです。今のルールは与党の、最終的には今の自民党の場合では総務会ですが、政調会に上げて総務会を通らない案件は閣議決定をしないというルールになっています。これは自社さ政権のときでいうと私も政調会長やりましたが、自社さ政権の最終的な決定は、自社さの決定がない限りは閣議決定はしないというルールになっています。ある意味では合理的なんです。なぜかと言えば政府が出したものですね与党が反対と言ったら法案は通りませんから、与党がまず賛成することを決めた後に政府が法案を出す。そこで与党の議員というのは非常に力を持っているわけですね。今回一人逮捕者が出ましたが、あの小山さんは小物だから捕まったんですよ。なぜ小物だから捕まったか、小物だから国会で質問したんですよ。大物がいますよねもう一人、大きな大物がいるけど。大物はたぶん国会で質問しません。おい、労働省の事務次官か官房長をちょっと呼んでこいと言ってですね。「おい、このくらいちゃんとやっとけよ」とこう言って自分の部屋に呼びつけてやっていますから、議事録が残ってないんですよね。お金をどのくらいもらったかそこまでは私も知りませんけどもですね、つまりは与党の幹部実力者、あるいは族議員というのはそれぞれの分野でいろいろ「うるさ方」がいまして、そこを通さないことには閣議は物事を決定できない。国会に出せないものですから。先生何とか何とかそのかわりパーティーのときには多少私のほうでと言ってお役人が一生懸命パーティー券を代わりに売ってくれたりするのです。そこでもたれあいができて小物の人は与党ではめったに質問しないのですが、小物の人が質問したものだから議事録が残って一人が収賄罪で捕まったという、こういう構造になっているわけです。

 そこでイギリス型の構造というのはですね、与党と政府を一体化しよう、イギリスの本会議場を見てきた方がおられるかもしれませんが、ベンチ式なんですよ。日本のようにですねここに議長席があってこういう風に扇型の国会じゃなくて、せいぜい議員の座るところはこのくらいの部屋なんですが、簡単に言えば議長ここにいるとですね、ここにベンチが並んでいるわけです。それからこっちのほうにもベンチが並んでいる。ここに大きなテーブルがありまして、こっちに与党がずっといて、こっちに野党が座っているわけです。ここに例えばクエスチョンタイムでいえば、ブレアさんがここにいて、ここにヘイグさんでしたっけ、がいて、こういう形でやるわけです。ですから与党というのはつまりは総理大臣を中心にして、全部ここにほとんどいるわけです。だから内閣と与党が一体化しているんです。そのかわり官僚は、基本的に国会には出てくることはできない。この間聞きましたら、いや実はこの議長の席の後ろのところにちょこっといるんだけどあまり目立たないようにいなきゃいけない。その総理大臣のすぐ後ろにいてメモなんかをさっと渡せない仕組みになっている。

 実は今国会の実際の運営は誰がやっているか。今度名前は変わりましたが、大蔵省が大体予算をいつ頃に出していつ頃上げてもらいたいから基本的には通常国会こういう風にやってこういう法案を通してもらいたいからと、与党にはもちろん話をするけど野党のあのうるさい菅直人という男にも私の方からちゃんと言っておきますから、あらかじめ根回し全部しておきますからと、全部官僚が実は国会の野党の方の根回しもやっているわけですよ。それを実はイギリスではやらせない。日本でも基本的にはそういうのはやめて、そのかわりに副大臣とか政務官というのを置いたのですが、作った本人と言いましょうか、作ったはずの自由民主党自身がまだよくわかってないんですね。作っては見たけどこれどうやって使おうかというそれで今ごたごた少ししております。

 そんなことで私は日本の民主主義というものをまず国会に関して言えばまず内閣というものをきちんと国民が選んだ内閣だということの認識を、あるいは制度的にもきちんとしなくてはいけない。よくマスコミの人に言うんですけども、新聞記事には「内閣」という言葉はあまりないんですよ。「政府」という言葉なんですね、ほとんどが。「政府首脳は」、「政府は」と言われると、なんとなくですね、お役人とお役人でない人とごちゃごちゃになるんです。

 憲法には「政府」という言葉はひとこともありません。「内閣」という言葉なんですね。先程言いましたように行政権は内閣に属すると憲法第65条に書いてあるわけですが、実際は行政権は官僚に属するとそれを読みかえている。

 そのことはせめてやっぱり法学部で教授がおられるかどうか知りませんが、ちょっと違ってんじゃないかなという話を本当ならしてもらいたいなと思っているところであります。

 そういう意味で、私は日本の民主主義というものを考える時に、実は国民が国会議員を選ぶ、国会議員は実は総理大臣を国民の代わりに選ぶ役所なんだ、と考えれば国会議員を選ぶ選び方ももう少し見えてくるんじゃないかと思います。それにふさわしい形で2大政党とかあるいは2大政治グループにする。

 小選挙区、中選挙区、どっちがいいかなんて議論がまた出ておりますけども、それはひとつひとついえばいろいろ理屈があります。しかし、イタリアの例とイギリスの例はイギリスの場合は2大政党ですしイタリアの場合は2大グループですけども少なくともひとつひとつの小選挙区でAという党とBという党、あるいはAというグループとBというグループの総理大臣候補がまずきちんといて、だからAというグループの候補者を自分の小選挙区で選べばそのAのグループの総理大臣候補が総理大臣になる。つまりはブッシュにしたければブッシュの方の選挙人が選ばれる。ゴアにしたければゴアの方の選挙人が選ばれる。それが選挙の実は私は最大の意味ではないかと、このように思っております。

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政権交代は可能か

 そこで少し時間がなくなりましたが民主党がじゃどういうことを変えようとしているのかということを言っているとだいぶ長くなるものですから、少し生々しい話をちょっと一足飛びにしてみたいと思います。今年1年どうなるかということであります。

 実は昨年の11月に皆さんも関心もたれたかと思いますが、加藤紘一さんが野党の出す不信任案に賛成する、とおっしゃいました。私の携帯電話が鳴ったか鳴らないかなんていう話が時々ありますが、別に携帯電話だけではなくて必要なときはちゃんと話をしてるんですけども(笑)。

 とてもそういうことをやらない人だろうと半ばあきらめてたんですが、突然、賛成するというんでこれは本物かなと思ってだいぶ期待したんですが、ああいう腰砕けで終わってしまいました。

 ただ私はこの加藤政局が残したいろんな面があるなかで、政治的に言えばこれで完全に自由民主党は底割れしたと思っています。悪貨が良貨を駆逐する、じゃないですが、北海道にも有名な悪貨が―なんていったら怒られるかもしれませんけども、そういう人たちがどんどん力をつけてきて、多少良貨かなと思っていた加藤さんとか石原信晃さんとか塩崎(恭久)さんとか若手はですね、全部端っこに追いやられてしまって、これまでは何とか森さんはだめでも他の人がいるからと思って自民党を応援している人もですね、ここに来てもうこれじゃどうしようもないというそれはもう非常に定着したと思っております。

 ただそっちはそうなんですが、じゃ鳩山(由起夫)さんの民主党でとかですね、菅のいる民主党とかですね、横路(孝弘)さんのいる民主党で、ということにイコールなっているかというと、残念ながらまだそこまでなっていないことを私だってちゃんと理解をしています。そういうところまできたなかで民主党としてはまず先程申し上げたような経済の問題を含めて、きちんとした我々が政権を握ったらこういう改革をやるんだということをもう少しわかりやすい形で申し上げられるようにしたい。

 私は多少最近はですね、こういういい方をしております。ちょっと観念的な言葉になりますが、自由主義と社会民主主義を融合するといいましょうか、統合したそういう考え方を民主党の基本的な考え方にしたらどうか。

 自由主義という言葉には個人の自由といったような意味と主に経済に関して自由主義経済マーケットというものをある程度信頼するという意味を含んでいます。しかし生活までマーケットに任せるわけにいきませんから、そうした福祉の問題とかそういうところは社会民主主義的な考え方でやっていく。セーフティネットの問題はきちんとやる。実はセーフティネットという言葉もですね最近はちょっと変えて使ってるんですね。トランポリンという言葉に代えようと思っている。

 ブレア政権はですね、若い人が失業する。そうすると失業給付をするんですが、半年間の間に3つの内の何かをやらないと打ち切っちゃうんです。3つの内の何かというとひとつは研修、新しいパソコンの打てるようにする研修に応じるか、あるいはボランティア活動の何らかのことできちんとしたところでやってみるか、あるいは企業が試験的な採用のための予算を組んでるんですが、そういうものをやってですね、試験的でもそういうところで仕事をしてみる、この3つのことをやらない限りは打ち切る。何のためかといえば、つまり失業した人がもう一回いろんな能力をつけて再雇用するためのトランポリン、つまりはセーフティネットというのはサーカスが落ちたら受け止めるだけですから、トランポリンというのは落ちてきたらぽんと跳ね返すわけですね。跳ね返していくと、もう一回引き上げると、そういう考え方が出ております。
 そういうことを含めて、日本の経済においては自由主義的な改革を多少痛みが伴ってもやるべきだけれども、生活に関してはそうした社会民主主義的な考え方で、それを融合した考え方が民主党の考え方としたい。自由民主党というのは現状維持型の政治官僚管理型経済の、私が国家社会主義だというとですね、ちょっとソ連とごっちゃになるからやめた方がいいといわれた方もいますが、まさにそういう現状維持型の保守主義だと、そういう対抗軸でこの選挙戦を考えていきたいと思っております。

 そこで最後の短い時間で今後の今年の状況を申し上げますと、1月の31日から国会が始まります。いろいろな法律規定がありまして、7月29日が参議院の投票日、なるべく夏休みで遊びに行ってもらいたいと森さんがですね、また言うのでしょうと思うんですね。しかし私は森さんが思ったように簡単にはいかない。ちゃんと7時くらいには帰ってきたら8時まで投票できるわけですから。
 そこで私達が今やっているのはですね、野党、とりあえず民主党と社民党と自由党の3党で参議院の選挙協力を話し合い、実は無所属の会というところも含めてやっておりますが、27の1人区でできるだけ統一候補を作って当選させたい。自公保が過半数割れを起こすようにやっていきたい。

 3年前に自民党は過半数割れを起こしたのですが、3年前のときの過半数割れは自由党や公明党が野党でしたから、民主党と一緒になって自民党が過半数を割ったのですが、1年もしない内に自由党が自民党と組んじゃった。公明党もそのあとついていっちゃった。どうも野党第1党の党首がだらしないから、―誰だといったら菅直人だという話なんですが(笑)、そういう未熟さもあったかもしれません。

 そこで最近はですね、参議院で過半数を与党が割ったときにはもう四の五の言わない。即座に衆議院の解散を求める。そして解散しなければどうするか、参議院では法律が通りませんよ、となる。

 さらにはですね、2院制という問題も憲法の問題ですが、衆議院はこっちだ、参議院はこっちだと、逆になったときにどっちが正当なのか。実はイタリアにも上院下院があるのですが、イタリアはどうしているかというと、同時選挙なんですよ。毎回同時選挙をやっている。

 ですから私は同時選挙というのはですね、民主主義が少なくなると言われているがおそらく逆だと。同時に衆参の選挙をやることによってはっきりと白か黒かをつける。参議院でせっかく野党が勝ってもその後に、一人引っこ抜き二人引っこ抜きまた向こういっちゃったってことになればわけが解からなくなります。

 そういう意味では私は参院選は7月29日ではなくていいのです。衆議院の場合は解散したとたんに国会が終わりますから、そう考えれば、もしかしたら国会のある段階でまた不信任案でも出せば、加藤さんがどうするか山崎さんがどうするかは別として、もうこれはどうしようもないな、それならもう思い切って国民の皆さんに衆参同時選挙で政権を選んでもらおう、このくらいの度胸が森さんにあれば私もですね、森さんのことを再評価したいと思いますが・・・。私はそういう状況まで追い込みたい。しかし残念ながら衆議院を解散しないとなれば参議院で過半数割れを与党が起こしたときに即衆議院の解散を求めて、解散するまでは協力しない、という形で臨みたいと、思っております。そうしますと8月、9月当たりはですね、衆議院の選挙になって、来年ここにもしお呼びいただいた時は、少し立場が変わっているのか変わっていないか。そんなことを考えながら今日はやってきたところであります。少し予定の時間をオーバーしましたが、一応私の方からの話ということにさせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。

第2部 シンポジウム

  パネリスト      菅 直人 氏

  コーディネーター   山口 二郎

kan05

山口  少し低くなって後ろの方は顔が見えにくいかと思うんですけども、ちょっと背伸びをする感じでお話をしたいと思いますが、第2部の対談の方に移りたいと思います。
 実はですね私は菅さんとの付き合いはもう多分10年近くもなる。昔、社会民主連合という小さい政党があったころに、菅さんがまだその社会民主連合の多分3回生ぐらいのころですかね、そんなときから付き合っておりまして、社民連のころはまさか野党第1党の代表とか幹事長みたいな立場になるなんて夢にも思ってなかったんですけども、やっぱりそれだけ政治の世界も夢があっていいっていうことなんだと思うんですね。

 今日のお話はですね、前半は非常にアカデミックな話であり、実は私がここでやってる行政学という講義を聴いた諸君は、なるほどネタはこっちにあったのかと思ったかもしれないけど、実はネタはこっちで多分菅さんはもともとのネタは松下圭一先生という法政の政治学の先生が一番の大ネタなんです。

 私はそれなりに勉強して、菅さんも松下教授のいわば弟子みたいなもので、共通の師匠を持ちながらそれなりに勉強してきたという共通性があるわけです。わりとアカデミックな話が多かったので、後半は少し現実的な話をいろいろと聞いてみたいと思います。
 学生諸君からEメールで菅さんへの質問を募りまして、いろいろとたくさん頂いております。それを中心にして伺って行きたいと思うのです。まず最初は、当面の政策課題をどうするかということから伺って行きたいと思います。

 先程にも触れてありましたけれども年明け早々株価は下がり、円安で金融機関の経営危機、不良債権問題と非常に深刻化している。そういう中で、ようするに金融再生法を作って自民党はこうすべきだったという評論家的な批評は非常にもっともなことだけれども、今目の前にある問題はどうするのかということですね。あるいはそごうやゼネコンに行った、税金による穴埋めは認めないという数字論を言うのももちろんそれは非常に解かりやすい。だけども、企業をどんどん淘汰して1回やっぱり失業率がバーンと上がってもそれはしょうがないと考えるのか、その辺の当面の問題についてですね、どういうスタンスでいくかということからまずちょっとお話をしていただきたいと思うのですが。

日本経済の処方せん

kan06  株安になってなぜいけないのか、実は確かアメリカでは銀行が株を持っていないんですね。持株会社はありますが、普通の銀行は株を持っちゃいけないことになっているから、株が下がったからといって銀行は不安定になることはないんです。日本では、だいぶ減りましたけど銀行が相当の株を持っている。つまりは不良債権が例えばこっちに5兆ある。しかしこちらで前買った株の100円で買った株が1,000円になってですね、5兆円の含み益がある。そう思っていたら、株が下がると含み益がどんどんなくなって場合によっては逆に損になる。買った値段より安くなっちゃった。そうするといわゆる銀行の債務超過ということになる。そうすると今の法律でいえば債務超過になった銀行は即営業停止ですから、そうならないためにどうするかというので銀行は努力してきたわけです。ですから構造的には銀行が株を持つという仕組みそのものも考え直さなければいけないと私は思っております。

 たださっきちょっと手術室の話をしましたが、いくら良い政策や法律を出しても、使い方が良くなければ決して経済が立て直らないというのがこの10年間の繰り返しでありましたから、今後の国会の中で金庫株だとかいろんなことが与党の中からいわれておりますが、そういう中途半端なことをやったって、まったく効果がないと思っています。やるのであれば今申し上げたように最終的には銀行が株を持たない仕組みを1つは作っていくということが展望としてはありますが、あまり具体的なことは別に逃げているわけではないのですが、出してそれのつまみ食いをされることはどちらかというと避けたいと思っています。

kan07山口  ただ現実問題として小渕政権、森政権といわゆるカンフル剤をどんどん投入した。さっきもおっしゃったように国の借金がどんどん増えていくと、ちょっとカンフル剤が切れかかると窒息するという繰り返しなんですけど、この状況というのはどうやって突破していくのか。先程、公共事業を中心とした大きな政府について限界があるということをおっしゃったんですけど民主党の政策は何を機軸にしていくのか。
  実は昨日でしたか、一昨日でしたか大蔵省―今でいう財務省の幹部とですね、懇談をしまして、実は日本のこの間の政策はまさに内需が足らないからつまり個人消費が伸びない、あるいは企業の投資が少しは回復しているものの、あまり伸びないから、その足らない部分を国が借金をして公共事業でやっていくという。それで景気を底支えするんだという。

 それじゃ景気の良かったときに赤字国債を出さなかったのかというと、今から10年位前に何をやったかというと、やっぱり赤字国債を出したんですね。当時は何が理由だったかというと、アメリカとの間の貿易黒字が大き過ぎるだから貿易黒字を小さくするためには内需を拡大しなきゃいけないからそこでまた公共事業・・・、とこういういい方をしたんですね。

 私はどうも財政というものを景気対策、経済対策の柱にすること自体が間違ってるんじゃないかと思います。イタリアに行った時にみてきたのですが、イタリアはどうしたか、ユーロに入るためには1年間の財政赤字がGDPの3%以内にしなきゃいけないというルールがあるものですから、プロディさんは何とか3%以内にしようと思ってユーロ税という税金を取って、国家公務員を猛烈に削減して、それから国がやっていた仕事をどんどん民間に移した。水道事業のような事業までですね、民間の企業に水道料金を取っていいから当初はそっちでやってくれといってそういうことをやったわけですね。それで景気が悪くなったのかというと少なくとも5年間の中で見ると民間の活力が増して、まだ失業率が高いですけども少なくとも5年前に比べれば元気が良くなって、最近は税をきっちりとるようになった。きっちりとったら税率を上げなくても税がどんどん入ってきて、ユーロ税で取ったお金は今返していますとこの間言っていました。

 日本は財政に頼って景気を維持するというけれども、国民の皆さん、ここにおられる皆さんもそうだと思いますが、どうも借金が多そうだと思うと、将来の年金も危ないなと俺の将来もはっきりしないなと思うと今結構20代あたりの人が貯金を一生懸命してるんですよね。

 経済力の議論になるかもしれませんが、日本の場合はGDPが500兆円あって、簡単にはその500兆円を皆さんが使えばそれでいいのですが、500兆円もらった人が例えばわかりやすくいえば100兆円貯金しちゃうと500兆作ったのに400兆しか国内で売れない。それでアメリカに50兆売ってまだ50兆足らないから、じゃ無理やり変えましょうといって皆さんが預けたはずの貯金を勝手におろして、国債を買って森さんが一生懸命ばらまいているという構造です。それで景気を支えていることになるんだろうか。

 ですから私は財政の役割というのは、逆にまさに政治が担当すべき問題について危機管理的に経済の面でも役割が必要だけれども、大きい意味でマクロ的な意味で財政に頼って景気を維持するという考え方を10年間やってきたこと自体が間違っていたのではないかなと思っています。

 民主党の軸とは何か

kan08山口  当面の政策課題の話はこれくらいにしてですねいよいよ本筋の議論に移りたいと思います。学生諸君から頂いた質問の中で結構多かったのは、「民主党とは何か」という非常に素朴な質問です。自民党と民主党はどこが違うんですか、という質問を何人かの学生からもらいまして、これは民主党を近くでいろいろ見ている私でもひとことで説明するのはなかなか大変かなと思ったんですけど、まずこの質問に答えていただきたいと思います。

  2つ別の切り口で言いますと、1つはさっきちょっと言ったことなんですが、今の民主党が完全にそうなっているかどうか別として、私が民主党はこうあるべきだと思っている考え方で言えば、先程言った自由主義と社会民主主義を融合したようなことを柱にした政策をとる政党、それに対して自由民主党は現状維持型の、国家管理型経済に過大に依存した現状維持型の保守党だと、私は非常に違うと思います。

 ですから非常にわかりやすい例でいえば公共事業の問題でもいくら亀井さんが公共事業を見直すと言ったって、建設省の何とかダムを進めた河川局長が今年の参議院選挙で非拘束名簿に載っている。あるいは農林省は構造改善局から、諫早湾の埋め立てをやっている構造改善局から相変わらず候補者がでる、ということを見れば、そういう無駄な公共事業発生装置を自民党は維持拡大しようとして、何の見直しにもなっていない。そういう意味で基本的な政策的な差ははっきりあると。

 次に、今の民主党は3期生以下が91名でつまり7割を占める。3期生というのはいつからかというと1993年初当選です。このとき初当選した人の今民主党にいる大部分は例えば日本新党で当選したとか「さきがけ」で当選したとかという人たちで、2期目もそうですし1期目の今回の人もそうです。ということは何を意味しているかというと自民党にいたとか社会党にいたとかミニ政党社民連にいたというのが4期生以上であってですね、3期生以下にはそういう55年体制下の政党にいたことのない人が3期生以下で7割になっているわけです。私はこのことが民主党の実は求心力の中心であり、体質の中心であると思うんです。

 ですからよく横路さんと鳩山さんがどうとかいろんなこと言われますが、大体話題になっているの4期生以上の話でありまして、あのあたりがどうだからといって別に民主党がびくともしないと私が思っているのはそういう意味です。

 そこでもう1つだけ言いますとちょっと今の質問を越えるかもしれませんが、小選挙区制にはですね、ドラフト制の効果があるんですね。野球でありますよね、俺は巨人行きたい俺も巨人行きたい俺も巨人行きたい、俺も自民党行きたい自民党行きたい・・。北海道の場合自民党ばかりはいませんが、私の生まれ故郷の山口県なんか皆自民党に行きたいみたいなことを、お役人出身の政治家志望の人は言っていたのです。ところが、例えば山口県の3区というところに佐藤信二さんという佐藤総理の息子さんがいるわけです。そこに若い平岡君というのが政治を志して市長選で負けてどうしようかと思っているときに、自民党に行こうかなと思っても、思ったかどうか知りませんよ私は(笑)、もし思ったとしても小選挙区になると、1人そこに現職がいたらもう入りようがないんです。小選挙区だとしても1人が降任しても2人目、2人目が降任しても3人目、3人目が降任しても極端に言えば無所属で派閥単位でですね、どんどんやって当選して現職落ちたら追加後任、つまり自由民主党の活力というのは追加後任にあるわけですね。しかし1人区になると1人出るところにもう1人が派閥で応援することができませんから、そこで自民党の現職がいるところで政治をやろうと思った人は多くは民主党も羽田さんもいるし鳩山さんもいるしそう極端ではないから民主党でやればいいじゃないか、とこうくるわけですね。ですから圧倒的に若くて良い人材は今民主党にきています。

 それで自民党で1期目なんていうと誰が有名ですか、知っている人だったら小渕優子さんがいるな、というぐらいでありまして。我が党で有名な女性議員は誰がいますかというと水島広子さん。別にどちらが優秀かは採点したわけじゃありませんが、少なくともそういう人材がどんどん集まってきています。

 ですから、そういう意味で民主党と自民党がどこが違うかといえば、そういう党の体質も変わってきていますから、多少かっこいい言葉で言えば、過去のしがらみと利権を守る自民党に対して世代を含めてですね未来に対しての1つの希望を未来の責任を感じている若い層が民主党の中心になっている。ちょっと宣伝になりますけど。

山口  ただそのマスコミを通して見ておりますと、どうもやっぱり党の幹部クラスというのは皆さんベテランの方が多いからついつい横路さんがこう言って鳩山さんと喧嘩してという話が見えてくるわけですよね。自民党と違うというのはまさに菅さんを見てれば自民党と違うというのは非常に僕はよくわかるので薬害エイズの時もうそうだし諫早湾干拓事業のときもそうだし自民党の人は絶対こんなことはしないというのはわかるんですけれども。

 しかしですねやっぱり具体的な話になってくるとやっぱり公共事業を見直すと東京で言っても地元の人はなんとなくやっぱり新幹線が欲しいとか、そういう人は多分いるでしょう。あるいはですね、去年の秋の臨時国会で僕が一番腹が立ったのは、原発の地元の市町村に対する補助金をことにカサ上げしてかつ地元負担の起債を認めてやって、特別地方交付税で措置するなんていう法律が通りまして、原発利権法みたいな内容なんだけどもそれも参議院の民主党の方が簡単にのってですね一緒にやろうとしたということが新聞に出ていまして、我が目を疑ったんですけど。

 つまり民主党が、若い人、例えば菅さんや菅さんの近くにいる枝野さんとか、そういう人が本来の改革を出して行動するというのはよくわかるんだけども、それがその党全体の政策になるかという点でですね、結構政治を真剣にウォッチしている人はその辺が今ひとつ心もとないなという風に思ってるんではないかと思うんですけども、どうですか。

  おっしゃることはその通りなんですよ。ですから政党というものは、例えば神戸に行きますと神戸空港反対だと私が行ったら、菅さん、もうかれこれ20年位前から市議会でいろいろ賛成したりしてきた経緯があって民主党も地元も賛成だからここではちょっと大きな声では言わないようにという話が現実にあります。ですから確かにスパっといきません。そういう人たちにしてみれば、民主党は分権の党ではないか、それなのに党の本部だけが勝手にものを決めちゃ困る、と理屈っぽいことになるのでややこしい。だからそこはせめぎあいです。かなりせめぎあいです。

 それから、今言われた原発の問題も最後までだいぶモメまして、最終的には反対でまとめましたけども、多少、そういういろんな議論があります。応援団の中にも多少原発を積極推進派から消極推進派から反対派までありますから。ただここはスパっとは行きませんが、少なくともベクトルの方向は、今私が申し上げた方向に向かっていると、スパっと全部をいっぺんに整理する形には、なかなか政党というのはいろんな要素がありますから、なりませんけれども、少なくとも方向は今私が申し上げた方向に大筋は行っていると、そう思っています。

参院選の戦略

kan09山口  今年は先程お触れになったようにですね、参議院選挙が予定されていまして、今年の政治状況というの非常に変ですね。つまり3年前の参議院選挙の時、あれは予想外の自民党敗北で橋本さんが辞めちゃって、民主党は予想外の大勝利だったという風に私なんか見てたんですけども、今年は自民党も含めてやっぱり自民党は負けるだろうという雰囲気が漂っています。あるいは連立与党の公明党なんかもですね、自民党との距離を微妙に測り始めている。KSD問題なんか出てくるとやっぱり、与党だけれどもわりと自民党に厳しいことを言っているということで相当自民党の動揺が見えている。

 そうすると今年の参議院選挙というのは民主党にとっては勝って当たり前という大変厳しい選挙になってくるのだろうと思うんですけども、そこで勝って当たり前という選挙を本当に勝ちきるなかなか難しい面もあると思うんですね。あるいは野党の選挙協力の話もあったけれども、参議院選挙で期待通り躍進するとしてそこからどうやって政治を変えていくのかということを少しお話してみたいと思うんですけども。
 3年前は菅さんが代表の時代に参議院選挙で躍進した後、おっしゃったようにまだ秋の金融国会からすうっとしぼんでいって、自民党が息を吹き返したみたいな形になったんですけども、3年前の教訓を踏まえながらこのあとの展開どういう風に進めたらいいかと思っていらっしゃるんですか。

  まさに自民党もですね、特にKSD問題がこういう形で火を噴きましたので確かに自信をかなり喪失しています。公明党はというと、労働省が絡む事件で、今労働省は厚生労働省になりましたので大臣が公明党出身の坂口さんですから、坂口さんがはたして当時の事を徹底的に調べ上げてやれるかどうか、私はこれは公明党の姿勢が問われるという風に思っていますが、公明党も一緒に沈むのかどうするのか、これもやや漂泊的で恐縮です、なかなか見ものなんですけども。

 そこで3年前の先程ちょっと話をしたことですが、3年前は、参議院選挙が始まる前から、まさに北海道拓殖銀行の破綻の後、長銀問題がずっと揺れ動いていまして、あの選挙が終わった後、長銀を中心にどうするか、ということに対してまさに対案を出したわけです。そのときは自由党、公明党は野党でしたから一緒に3党で法案を出したのです。

 なかなかちょっと裏話的になりますが、経過が面白くてですね、公明党は「自民党が飲める案にしてくれ」というんですね。自由党は「自民党が絶対飲めない案にしてくれ」というんですね。何でもいいから飲めないようにしてくれ。

 民主党は飲める案、飲めない案というのではなくて、あるべき形はこれだから飲めれば飲んだでいいし、飲めなかったらそれはもう最後までつっきっていくということでやったら丸飲みされたわけです。そこで当時の小沢自由党党首は、飲める案じゃまずいんだといってやっぱり民主党とやったんじゃだめだと言ったのか、その次の金融健全化法では自民党と一緒に今度は組んじゃったわけですね。

 健全化法というのは我が党も出していまして、我が党はまさに再建の工夫を非常に厳密にやれということを言ったわけですが、それを骨抜きにしたのが政府案として自由党と公明党の賛成で通っちゃったものですから、そこで先程言ったように、ガン細胞をちゃんと切らないでも半分でもちゃんと公的資金が導入される仕組みになっちゃったものですから、今の状況が続いているというわけです。

 そこでそういう意味では政策的には間違ったとは思いませんが、確かに政局的には結果に自由党や公明党が野党で選挙を得ながら自民党に引っ張っていかれたのを止められなかったという意味ではそれはある意味でまだ未熟だったのかなと思います。

 今回はそのこともありまして、現段階ですでに、そういう話し合いを自由党、社民党また場合によっては選挙協力は別ですが共産党とも話をしております。

kan10 参議院で自公保が過半数を割った場合は、まず参議院の議長も両委員長も多数を取った野党4党の方から出して参議院のコントロール権をまず握る。そして衆議院の解散を求めていく。議長と両委員長を握れば、参議院にまわされた法案が気に入らなければ全部廃案にしてしまえばいい。もう一回衆議院に戻ったときには3分の2の賛成が必要になるけれども、そんな数はとっても与党にはありませんから、法案が一本も通らないことになる。そうするとマスコミの皆さんからは無責任だとか言われるかもしれませんが、幸いにしてというか、7月8月の話ですから予算はもうこの国会で6月までに終わってしまいますから、そういう意味では森政権あるいは自民党政権が続く方が無責任だから、僕は少し我慢してもらって4党結束して衆議院の解散を求めていく。そういう考え方で今のところ4党のその考え方は各党共通していますから、3年前とは少し展開が違うのではないかと思っています。

政権交代のシナリオ

山口  確かに私も政治の空白が許されない、あるいは政治の安定が経済対策にも必要なんだという言い方はおかしいと思うんです。つまりこれだけいろんな政策をやっても効き目がないというのは政治の欠陥だと。あるいは、今円安がどんどん進んでいくというのは外国の日本を見る目が非常に厳しくなって、日本という国に対する評価全体がやっぱり下がっているという風に受け止めてもいいじゃないかと私は思うんですね。そうするとやっぱり政治を変えるということを通して経済も含めたシステム全体をもう一回オーバーホールするという話が緊急の課題になっていくんだろうと思うんです。

 だからそこの限りでは今の議論は私も大体賛成なのですが、では次のステップはどうなるのかということを当然疑問に思うはずなんですね。つまり自民党を倒すという意味で野党与党結束して参議院を握ったらそこで一回自民党を追い詰め、解散総選挙というところまでは見えたんだけれども、じゃ自民党にとって変わる政権というものはどんなものなのか。別に何党何党がくっついてというのは今からする必要はないとは思うんですけども、やっぱり誰がリーダーになってどういう政策的な機軸で政権を運営するのかといったようなことについても、ある程度は本当に大まかな骨組みでいいから見えてないと、学生さんの質問なんかにも細川政権の二の舞になってしまってはいけないという厳しい意見があったんですけども、その辺はどういう風にお考えでしょうか。

  参議院選挙の前に衆議院選挙まで見通して政権構想の野党間のすりあわせをするべきかどうかという議論も一部あったんですが、他の野党含めて参議院の選挙の段階はそこまではしなくていいのではないか、それぞれまず自民党中心の政権がだめだというところでやればいいじゃないか、ある人の言葉を借りれば国共合作だと、毛沢東と蒋介石が日本を倒すために手を握ったという国共合作だと皆さん言われるものですから、参議院の段階はまずは選挙協力で行こうと。ただ参議院がもし野党が勝った場合には今度は衆議院選挙ですから、その時は国共合作では不十分で基本的に政権構想の大枠の合意が必要になると私は思っています。

 ですから今の流れでいえば社民党、自由党と我が党ということになりますが、共産党が早いことイタリアのようにですね、左翼民主党ぐらいに名前を変えてですね、これを変えてくれればあるいはそういう中に入るのかもしれませんが、今のところちょっとなかなか党名や綱領までは間に合いそうもありませんのでちょっと別扱いですが、そういう段取りを考えています。

 内容的にはですね、政権というものを考える時に衆議院の任期が最大4年ですから、4年間程度の長さの中でこれとこれはやろう、しかしこれとこれはやるまい、ということをまず合意することが必要じゃないかなと。そういう点で経済的な構造改革の問題とかそういった問題がひとつの柱になるだろうと思っています。憲法の議論も各党いろんなことを言っていますが、私の見通しで言えばその段階の議論ですが、そういう3年とか4年のスパンで言えば、私は憲法の議論は大いに議論を進める事は結構だけれどもそのできた内閣のそういう時間の中で一挙に結論を出して何かするということには多分ならないと思います。

 ですからその中で野党が協力をして政権を目指すときにどういう総理大臣候補あるいは総理大臣像かということもあります。先程ちょっとイタリアを見てきたと言いましたが、イタリアの5年前は政府民主党という共産党が変わったものが一番大きな政党でしたが、そこだけでは左により過ぎてるんでプロディさんというボローニュ大学の先生、北大の先生でもいいんですが、そういう人を引っ張ってきて総理候補にして、そして勝ったわけです。今回中道左派グループは何をしようとしているかというと、ローマの市長で元「緑の党」のロテッリという人を首相候補にすると。このロテッリ委員会というものにはそういう中道左派的政党プラス環境連盟といったような環境運動グループも参加していまして、ベルルスコーニは「フォルッツァ・イタリア」という党を何年か前に作ってますが、北部同盟というかなり強力な地域政党がありまして、そこと連合して逆にこちらもオリーブ的に連合している。どちらもオリーブ的に連合してロテッリ対ベルルスコーニというこういう構造です。

 ですから逆にいえば今は自公保政権ですから、自公保のほうも森さんで行くのか小泉さんで行くのか河野さんで行くのか、神崎さんということはないと思いますが、そういう総理候補を掲げて衆議院選挙そのときに民主党含めてそういう政党がどういう総理候補で行くのか、民主党という立場でいえば当然党首ということが第一候補になるわけですけども。

 そういうイタリアの例でいえばプロディさんとかロテッリさんみたいな大学の先生や自治体の首長がいろいろいますよね日本でもなかなか頑張っている首長さんいますから、石原さんだとちょっと・・・、かもしれないから、宮城にもいるし三重県にもいるしですね、場合によったら頭の体操としてはそんなことをいろいろ考えています。今日ちょっとしゃべっちゃいましたがあまりこういうことが新聞に出るとですね、また早くやったから失敗したなんていわれるんですが、イタリア的類推で言えばそういういろんなことをその段階では考えなければいけないのではないか。とこう思っています。

山口  菅さん自身は表へ行って首相候補になるというのと、オーガナイザーでもってオリーブの木みたいな非常に大きな構想でね、舞台裏で仕切るのとどっちが好きなんですか。

  やっぱり自分が仕事をしやすいのは、舞台裏とまではいいませんが、ナンバー1というのは日本の社会はなかなかきついですね。別に小沢さん的にですねキングメーカーとかそういう発想で言ってるんじゃないんですが、運動的にいろいろやる方が個人的には好きですね。

地方政治と民主党

山口  それからもう一つは地方のリーダーのことを少しお触れになったので・・・。
 学生から頂いた質問の中には、何件か地方の選挙はつまらないのはなぜか、民主党ちゃんとしろという意見があって、ようするに栃木でも無党派が勝ったけど民主党は形式的には現職の方を推薦、ですね。そういうのつまんないから何とかしてほしいという切実な意見があったんですけども。

  これも先程のちょっと公共事業とやや似ていることもありましてですね、つまり栃木県も実は水島さんだけは私は中立で行きますといってなかなかかっこ良くですね、最も応援団からはだいぶ叩かれていましたが、終わってみたら水島さんが一番選挙特性があったという結果に栃木はなったんですが、長野でもですね実質的な応援はかなりしたんですけども地元県会議員の皆さん中心にいろいろしがらみがありまして、なかなかすっきり応援という風にいきませんでした。先程言ったようにやっぱりこっちがいいんじゃないといっても地方分権だからとか言われるとですね、なかなかそこを一挙に変えることはできません。

 そこでですね私はそのように首長の選挙で、もちろん民主党が今野党の第一党ですからその責任としての候補者を出すというのは6、7割は推論としてよくわかるのですが、もっと前にですね、地方自治体いわゆる自治体の取るべき政策の、それこそ自民党と民主党の違いをはっきりさせた中でこういう選択肢でこの人にするんだと。

 北海道の知事もどっちの知事か今わかりませんが、横路さんの後継で出られたけど今自民党と・・・。
 アンチ自民党知事といえるのかどうかわかりませんけども、大体知事というのはそういう風に現職知事になっちゃうとですね、自民党が2期目3期目は擦り寄ってくるというのはたくさんありますから、その知事がどういう政策を持っているかということでの基準だと思います。わかりやすく言えばまさに情報公開とかあるいは行政評価とか、つまりはまさに民主主義の民主化ではありませんが、そういう地方の首長が、宮城では警察とケンカをしながら警察情報も含めて公開しようとやっていますが、そういう情報公開、行政評価みたいなことを含めたより民主化した政策を取る知事ならできれば3期までは応援すると、3期目以上はいくらいい知事でも良くないと、そういう基準を設けて選択したいと思っています。ここはなかなかまだおっしゃるところがその通りのところもあります。

若い世代へのメッセージ

山口  もう予定していた時間になりまして、そろそろお話を結びにしなければいけないのですけども今日は大学の企画ということですね、学生