公開シンポジウム「戦後補償裁判の過去・現在・未来」

ケント・アンダーソン●本研究科助教授/現在オーストラリア国立大学
奥田安弘●本研究科教授
古谷修一●香川大学法学部教授
ほか

●主催:高等法政教育研究センター

報告

 アンダーソン報告は、米国の戦後補償裁判に関するものである。同氏は、1996年~2001年の対ヨーロッパ訴訟と1999年以降の対日本訴訟を比較し、両者の結果が異なった理由、連邦立法の動向などを分析した。そして対日本訴訟は、現行法のもとでは、ひとまず終了したと思われるが、新しい連邦法が成立したら、今後も続くであろうと予測する。

 奥田報告は、日本の戦後補償裁判に関するものである。同氏は、日本政府の優位を裁判の争点ごとに分析しながら、ドイツとの違いを考察する。そして日本の場合は、賠償基金を設けるとすれば、慰安婦や強制連行の被害者に対象を限定したうえで、賠償金額もかなり少なくなることを覚悟すべきであろう、と指摘する。

 古谷報告は、国際刑事裁判所(ICC)への提訴の可能性に関するものである。同氏は、現行のICC規程のもとでは、国家の賠償責任ではなく個人の賠償責任しか追求できないことを指摘しながらも、ユーゴ国際刑事裁判所の裁判官団の報告書および国連人権委員会のガイドラインが、国家の賠償責任を認める方向を示している点に注目する。

 報告後の討論では、コメンテーターのみならず、本学のスタッフによるフロアーからの発言も多数あった。なお本シンポジウムの記録は、本年夏に信山社から出版される予定である。 (文責 奥田)